校長メッセージ

4月全校集会校長講話

              渋沢栄一とCSR 

 早いもので新年度が始まって3週間が経ちました。気持ちを新たに学校生活をスタートさせていますか。3年生は先日も言いましたが、進路実現に向けて本気の姿を見せてください。2年生は部活動や学校行事など全ての場面において、中心的な役割を果たさなければなりません。是非51年目の所商を引っ張っていってください。そして新入生諸君はどうですか。所商生活に慣れてきましたか。部活は楽しいですか。特に授業では、初めて学ぶ商業科目に少し戸惑っているかもしれません。しかしそれは新入生全員が同じ条件です。新入生全員がゼロからのスタートです。学び始めの今がとても大切です。しっかりと学んでください。

 さて先日、5年後の2024年から発行される新1万円札に、渋沢栄一の肖像が使われるというニュースがありました。埼玉県の深谷市出身で、日本で初めての商業銀行や東京証券取引所などの創立に尽力した「日本資本主義の父」と呼ばれた人ですから、埼玉県の商業高校で学ぶ皆さんはこの機会に是非、渋沢について学び、誇りに思ってほしいと思います。

 渋沢は明治・大正に活躍したわけですが、当初、大隈重信に説得されて大蔵省に入省しますが、その後退官し実業家になります。大倉喜八郎や浅野総一郎といった当時の非財閥系の実業家と手を組んで、例えばサッポロビール、帝国ホテル、東洋紡、みずほ銀行など、今でも各業界をリードする大企業の創立にかかわりました。彼が生涯でかかわった企業の数は500社とも言われています。

  また同時に彼は、社会貢献活動にも熱心に取組み、日本赤十字社、東京慈恵会などの財団法人や大学の設立に力を入れ、生涯で600の福祉や教育関係の社会事業にかかわりました。

 なぜ彼が社会貢献事業に熱心だったか。それは彼が生涯貫いた理念が、「道徳と経済は両立する」ということだったからです。つまり私利私欲ではなく公の利益を追求する「道徳」と、利益を求める「経済」が事業において両立しなければならない、というもので、これを「道徳経済合一説」と言います。代表的な彼の著書「論語の算盤」の中で書かれています。事業をする上で、常に社会貢献や多くの人の幸せにするといった公益を追求しながら、同時に利益を上げていくという理念です。簡単に言えば、「経済は良い社会のためにある」と言うことです。

 なぜこの話を今皆さんにしているかと言うと、実は渋沢栄一のこの思想は、現代の社会で大変注目されているからです。グローバル資本主義、新自由主義といった過度に利益を追求する現在の市場経済の在り方、そしてその結果、格差が広がる今の資本主義社会に対する懸念から、今この渋沢栄一の理念が見直されています。

 皆さんはCSRという言葉を知っていますか。Cooperate Social Responsibility の略で、日本語にすると「企業の社会的責任」ということです。すなわち企業が倫理的な観点から事業を通じて、自主的に社会に貢献する責任のことです。

 最近では、環境問題などの社会的課題に、それぞれの企業が自社の強みを活かして解決に当たる、そしてそれをビジネスに繋げ、会社が発展するチャンスとして捉る。そんな積極的なCSRの取組みをする企業が増えてきました。また国や銀行、そして投資家も、環境問題などに積極的に取り組む企業に投資するという傾向になってきています。

 渋沢栄一から100年以上が過ぎ、これからの経済社会は、渋沢の掲げた理念を実践していかないといけないと人々は気づき始めたのです。それはそうしないと、もしかして地球そのものが持続しないという危機感からかもしれません。

 商業高校に学ぶ皆さんは、是非、渋沢の理念を学び、CSRという言葉を覚えてほしいと思います。そして今後の進路選択において、大切な視点として持っていてほしいと思います。「良い企業・経済は良い社会のため」という言葉を忘れないでほしいと思います。