校長メッセージ

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11月朝礼校長講話

「〇〇のはずだ」のワナ

 

 みなさん、おはようございます。

 早いもので11月になりました。10月は色々なことがありました。特に台風19号や10月25日の豪雨では県内でも川が氾濫し、多くの人々が被災しました。被災された方々には、一日も早く元通りの生活に戻れるよう祈りたいと思います。11月は穏やかな月になってほしいと思います。

 また、10月には大変、嬉しいニュースもたくさんありました。その1つとして、ノーベル化学賞に吉野彰さんが、リチウムイオン電池の発明者の1人として受賞したことです。我々日本人にとって、大変嬉しい勇気づけられるニュースでした。

 しかし今日は、ノーベル経済学賞の話をしたいと思います。日本ではあまり報道されませんでしたが、今年のノーベル経済学賞は、マサチューセッツ工科大学のアビジット・バナジー教授、エスター・デュフロ教授、そしてハーバード大学のマイケル・クレマー教授の共同受賞でした。この3人は、発展途上国での貧困問題について、実証実験によって具体的な解決策を示したことが評価されました。

 これまでにも、貧困問題に関する研究でノーベル経済学賞を受賞した研究者はいますが、この3人が最も画期的だったことは、「ランダム化比較試験」という手法を取り入れたことです。この「ランダム化比較試験」というのは、医薬品開発での動物実験などで使われる試験です。具体的に言うと、ある薬を与えた集団と与えない集団とで、どういう違った結果が出るか客観的に実験する方法です。これを貧困問題の解決に応用したのです。

 この手法を貧困対策に応用すると、例えば子供たちが、なかなか学校に通うことのできない貧しい村で、ただで給食を提供するグループと、そうでないグループを比較し、どちらのグループでより多くの子供たちが学校に通うようになるか、という実験を実際に行って、その結果を比較、検証するということです。

  3人の受賞者は、このような試験を多く実施することで、とても興味深い結果が得ました。例えば寄生虫を駆除するための薬を配ったり、親に教育の大切さを教育するほうが、お金や制服を配るより学校に通う子供の数が圧倒的に増えたということが、ケニアの小学校での実験で明らかになりました。これは意外ですよね。お金や制服、教科書を与えるほうが学校に行く子どもが増えるように思いますよね。しかし実験の結果はその反対でした。

 これまでの発展途上国への援助や貧困対策は、「こうすればこうなるはずだ」という思い込みが我々先進国すなわち与える側にありがちでした。「お金や物を、たくさん援助してあげれば、貧困は減るはずだ。減らないとしたら、その国の政府が悪いか、その国の人々が怠け者なのだ。」などと与える側である私たちの傲慢な態度も、しばしば途上国援助の分野では見られました。しかし、この3人は実験の結果を通して、エビデンス、すなわち科学的根拠を世界に示したのです。思い込みでなく「こういう実験をしたらこういう結果が出ましたよ。」と世界に示したのです。この功績は、これからの途上国援助、貧困対策の改善に大きな影響を与えていくと思います。

 このことを通して皆さんに伝えたいことは2つあります。一つ目は、思い込みではなくエビデンス、科学的根拠をもとに物事を判断してほしいということです。例えば、皆さんが将来、お店を経営するとします。商品に消費税込みの価格を表示するか、消費税抜きの価格を表示するか決めなければなりません。どうしますか?多くの人が、「消費税込みの方がわかりやすくていいや」と思うかもしれません。しかし実は、アメリカのある研究者がこの「ランダム化比較試験」を活用して「消費税などの税の表示が販売にどう影響するか」という実験をしました。その結果は「税込みで表示すると税抜き表示の場合に比べ8%売り上げが下がる」というものです。つまり税抜き表示のほうが売れるという結果が出たのです。

 今や、この「ランダム化比較試験」は行動経済学をはじめ、多くの分野で活用されています。皆さんの中にも将来、大学で経済学や経営学を学ぼうと考えている人もいると思います。是非、実証実験によるエビデンス、科学的根拠を大切にする人になってください。

 ふたつめは、世の中であまりニュースにならないことも注目してほしいということです。ノーベル化学賞の吉野さんは大きく報道されましたが、ノーベル経済学賞は、日本ではほとんどニュースになりませんでした。しかし今回の授与は長いノーベル経済学賞の歴史にとって画期的な出来事です。また今後の経済学全体の方向性も大きく変える受賞であると言っていいと思います。

 世の中には情報が溢れています。テレビは勿論、ネットやSNSなど様々な媒体からニュースを得ることができます。しかし、意外と偏った情報が多いのです。ものすごく大切なニュースが日本では報道されないことも多くあります。是非、アンテナを高くし、自分の興味・関心・感性にピピっとくる情報を敏感にキャッチしてほしいと思います。

 これから秋が深まり、過ごしやすい季節がやってきます。3年生諸君は進路が決まっていく人が増えていくと思います。しっかりアンテナを高くして、自分にとって必要な情報をキャッチし、卒業後に向けて、今から準備を始めてください。

 

10月朝礼校長講話

異なるものへのリスペクト
 
 早いもので10月になりました。こらからいよいよ秋が深まってきます。秋と言えば、「実りの秋」という言葉があります。これまで、精魂を込めて育ててきた作物が実を結び収穫の時期を迎えるという意味です。

 これは君たちの所商生活でも言えることです。春から勉強、部活、学校行事と様々な場面で努力してきたことがいよいよ実を結ぶ、目標にしてきたことの結果が出る季節です。特に3年生諸君にとっては、3年間、コツコツと努力してきたことが実を結ぶ時です。それぞれにとって実り多き2学期になるよう努力してください。

 さて、いよいよラグビーワールドカップが始まりました。日本は初戦、ロシアに勝ち、優勝候補のアイルランドにも見事に勝利し、日本中がにわかに盛り上がっています。11月2日までの大会中、日本全国の12の開催都市で試合が行われ、これまでになかったラグビーに対する注目と盛り上がりを目の当たりにしています。また、この大会を観戦するため40万から50万人の人々が海外からやってきます。所沢市の人口が34万人ですから所沢市の人口より多い人々が日本にやってきます。とてもワクワクする1か月ですね。

 ところでみなさん、今回の日本代表には何人の外国出身の選手がいるか知っていますか。31人中15人です。なんと約半分が外国人選手です。日本代表チームの半分が外国人ということに違和感を持つ人は世の中にはいるようです。ネット上を見ると結構、批判的な意見も見られます。たしかに他のスポーツではあまりないですよね。調べてみたのですが、サッカー、野球(WBC)、バスケットボールなどの日本で人気のあるスポーツのほとんどの日本代表選手の条件には日本国籍を持っていることとありました。

 しかしラグビーの代表選手の条件は大変ゆるく国籍は要件ではありません。日本に継続して3年以上住んでいれば日本代表選手になれます。これはラグビー独特のルールで、その理由はラグビーの普及の歴史にあります。ラグビー発祥の国であるイギリスが世界中に植民地を持っていましたが、イギリスは植民地や元植民地中心にラグビーを広めていきました。そしてイギリス人はどこの国に行ってもその国の代表になれるようルールを決めたことがこの独特なルールの由来です。ですから日本だけでなく今回のワールドカップに参加している国のチームのほとんどが10人程度の外国出身選手を抱えています。ラグビーでは普通のことなのです。キャプテンのリーチ・マイケルもトンプソン・ルークも自分を育ててくれた日本のため、桜のジャージのために長年にわたり、体を張ってくれています。

 私はこのラグビーの文化が好きです。また、これからの日本の社会に根付いてほしい文化だと思っています。そしてこれからの日本の社会の在り方を示しているように感じます。前にもお話しましたが、これからの日本の社会は、日本人だけでは成り立たなくなります。我々が直面している深刻な人手不足が解消されなければ、これまでのような豊かな社会を持続することはできません。外国人の手を借りないと乗り越えられないのが現実です。日本に働きに来る外国人は、勿論、自分のため、祖国の家族のために働きに来るのでしょうけど、我々からすれば彼らは日本の社会を持続させるために働いてくれているのです。

 外国人との共生は、お互いの文化、習慣を理解し尊重することから始まります。今回のワールドカップで多くの外国のチームが試合後に観客にお辞儀をする姿が話題になっています。オールブラックスが始めたようですが、彼らは日本の観客の声援とおもてなしへの感謝を日本のお辞儀という形で敬意とともに伝えたいと言っていました。また日本では、まだ受け入れられない、タトゥーについても外国の選手は試合以外の場所ではなるべく隠すようにしているそうです。サモアの主将ジャック・ラム選手がこんなことを言っています。「タトゥーは僕たちの文化に根付いている。しかし日本は違う。僕たちは日本にいる。日本の文化に敬意を払わなければいけない」

 日本に来る外国人は日本の文化・風習を理解し尊重する。日本人は外国の文化・風習・宗教などを理解し配慮して受け入れる。これこそがこれからの日本が目指す多文化共生社会に必要な文化ではないかと思います。

それでは、皆さん、それぞれにとって実り多き2学期になることを祈っています。

2学期始業式校長講話

スポコン?

 おはようございます。まずは、大きな事故もなく、皆さんが元気に今日、登校してくれたことを大変嬉しく思います。

 さて、今日から2学期がスタートします。2学期は、文化祭や体育祭、また2年生諸君の修学旅行など学校行事が盛沢山です。各部活動も、2年生中心の新しい体制で、日々頑張っていると思います。学校の外を見てみると、いよいよアジアで初めて開催されるラグビーワールドカップが9月20日から始まります。その他、現在中国で開催されているバスケットボールのワールドカップをはじめ、様々なスポーツの世界的な大会が開催され、来年の夏の東京オリンピック・パラリンピックに繋がっていきます。この秋から来年の夏までもしかしたら一生で一度しか体験できないようなスポーツのビッグイベントが、つぎつぎと開催されるわけです。

 ところで、皆さんはスポーツに関する法律があるのを知っていますか?それはスポーツ基本法という法律です。スポーツ基本法は平成23年に成立した法律で、それまでの学校教育などを通じてスポーツの普及を目指すスポーツ振興法を全面的に改訂したものです。この法律では、国民生活におけるスポーツの重要性に触れ、スポーツ立国の実現をめざすと謳われています。

 この法律には前文があり、その最初の一行にこの法律のスポーツに対する理念が書かれてあります。それは、「スポーツは、世界共通の人類の文化である。」ということです。そして、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利であり、全ての国民がその自発性の下に、各々の関心、適性等に応じて、安全かつ公正な環境の下で日常的にスポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、又はスポーツを支える活動に参画することのできる機会が確保されなければならない。」とすべての人にスポーツを楽しむ権利を認めた「スポーツ権」を謳っています。また、「スポーツは、次代を担う青少年の体力を向上させるとともに、他者を尊重しこれと協同する精神、公正さと規律を尊ぶ態度や克己心を培い、実践的な思考力や判断力を育む等人格の形成に大きな影響を及ぼすものである。」とあります。ようするにルールとフェアプレイの精神を守り、勝敗にかかわらず他者を尊重する態度が基本姿勢であるとこの法律は定めています。

 ところで皆さんは「スポ根」という言葉を知っていますか?スポーツに根性の根を合わせた言葉です。精神論を振りかざし、非科学的な過酷な練習をして、不屈の闘志と根性で乗り越えていくことに価値を置く世界です。私が高校生の頃は、まさしくスポ根の時代でした。テレビドラマや漫画の世界もスポ根ものが人気でした。皆さんは知らないと思いますが「アタックナンバーワン」や「巨人の星」「柔道一直線」などがその代表作です。実際、私の経験でも部活動では、練習中は一切、水を飲んではいけない、体調が悪くても部活を休めない、先生、先輩の言うことは絶対服従という世界でした。私は風邪で咳が出ていても部活を休めず、気管支炎になってしまったこともありました。

 しかし今はそういう時代ではありません。8月27日の読売新聞に武藤芳照さんという人の「スポーツ界にも法令順守教育」という投稿がありました。この人はスポーツ・コンプライアンス教育振興機構という組織の代表理事で東京大学の名誉教授です。武藤さんによると、今の「スポコン」とは「スポーツ・コンプライアンス」のことであると言っていました。社会規範にのっとり公正にルールを守り物事を行うことを意味するコンプライアンス、すなわち法令順守の精神が大切であるということです。体罰やしごき、非科学的で理不尽な決まり事などはこれからのスポーツから排除しなければならないと武藤さんは強く主張しています。

 皆さんはこれからの長い人生、スポーツとおして心と体の健康を維持し長生きしていく時代に生きています。今日、お話しした、「スポーツ基本法」の理念を頭に入れてスポーツを楽しんでください。もちろん、自己の技術の向上や心身の成長のためには限界を乗り越えなければいけない時、スポーツ基本法の前文にある「克己心」、すなわち自分自身の欲望や甘えに打ち勝つ精神を養うことも必要であると思います。しかしそれは、あくまでも「自発性の下」であり自分自身が努力し成長しようとする意志を持つことが大切です。このことは、スポーツに限らず、あらゆる場面で必要な姿勢であると私は思います。 

 今日から2学期が始まります。勉強、部活動、学校行事などあらゆる場面で、他者を尊重し、他者と協同し、公正さと規律を尊ぶ態度や、自分の甘えに打ち勝つ精神を培ってほしいと思います。

1学期終業式校長講話

             誰がいい学校にするのか?

 今日で令和元年度1学期が終了します。皆さん、1学期はどうでしたか?満足できる時間を過ごしましたか?目標に向かって努力し、達成感を得ている人もいるでしょうし、そうでない人もいるでしょう。それぞれの成果と課題をしっかり見つめなおし、2学期に向かってください。特に成績で思いどおりにいかなかった人はしっかり反省し、この夏休みに軌道修正をして取り戻してください。また、部活動を引退する3年生諸君は、部活動で学んだこと、経験を活かして、これからの進路実現に邁進してください。

 さて、今日は「誰がいい学校にするか」についてお話します。

  私は校長として1年と4か月、所沢商業高校をいい学校にしたいと願ってやってきました。中学生にとって「是非、行きたい」と思ってもらえる学校、保護者に「是非、行かせたい」と思ってもらえる学校。地元の人たちにも「是非、応援したい。」と思ってもらえる学校になってほしいと思ってやってきました。先生方も同じ気持ちだと思います。皆さんにとっても自分の母校ですから「所商っていい学校だね」と言ってもらえばうれしいと思います。

 それでは、誰が所商をいい学校にすることができるのでしょう。正直言って、校長の力は微力です。私一人では何もできません。先生方も日々がんばっていますが限界があります。もう答えはわかっていると思いますが、所商をいい学校にできるのは、ここにいる697人の生徒です。皆さん一人ひとりです。

 世間から評価される目に見える実績、例えば進路実績、資格取得の実績、また部活動の実績、先生方は後方支援はできますが、実際に実績を作るのはここにいる皆さんです。

 そしてこうした目に見える実績は所商に対する世間の評価にとって大切ですが、それと同じぐらい、いや、もしかしたらそれより大事なことがあります。それは皆さん一人ひとりの振る舞いや人格かもしれません。

  埼玉県の東部に庄和高校という県立高校があります。5月11日の午後、庄和高校の3年生男子4人が東武線の踏切内で、自転車ごと倒れ、動けなくなっている老人をとっさの判断で救いだしました。警報機が鳴り、遮断機が下り始めている中、非常停止ボタンを押して老人を踏切の外に救出しました。その後、春日部警察からこの4人の生徒に感謝状が贈られ、大きく新聞などに報道されました。これを見た県民は、「勇敢で親切な高校生だ。庄和高校はいい教育をしているのだろう。」と学校を高く評価します。

  本校でもこの庄和高校のような新聞に載る話ではありませんが、同じような嬉しいことがありました。先日、ある会合で地元のスクールガードリーダーのボランティアをやっているおじさんに話しかけられました。スクールガードリーダーは、毎朝、小中学生の通学路に立って交通安全を見守る人たちです。そのおじさんは、「先日、所商生とすれちがったところ、その男子生徒は、ポケットに入れていた手を、すっと外に出して丁寧に『おはようございます。』と挨拶してくれました。とても気持ちよかったですよ。所商はいい教育をしていますね。私の孫には是非、所商に行ってほしいですよ。」と言われました。私は校長として、本当に嬉しい気持ちになりました。もしこれが、自転車マナーなどを注意されて「うるせーじじー」などと言っていたら、言われたおじさんは「なんという高校生だ、所商はとんでもない学校だ。うちの孫には絶対、所商には行かせない」となるでしょう。

  学校の評判、評価とはそういうものです。ここにいる697人一人ひとりの振る舞い、言動、人間性が所商の評価を決めてしまうのです。皆さんの振る舞い次第で、「素晴らしい高校生だ。所商はいい教育をしているな。」となるのです。実際に「体験入学」や「学校説明会」のアンケートの結果を見ると、「在校生のお話や態度が大変よかった。とても参考になった。もっと在校生の話を聞きたい」という意見が圧倒的に多いのです。皆さんが所商の評価そのものなのです。

  明日から、約40日の長い夏休みが始まります。是非、所商っていい学校だなーと思ってもらえる振る舞いをしてほしいと思います。

  それでは、9月2日に全員、元気な顔を見せてください。以上です。


6月朝礼校長講話

                夢を諦めないで

 
 1学期の中間考査も終わり、先週からまた平常授業の日々が始まりました。部活動も再開し、これから夏にかけてインターハイ予選などが始まります。3年生にとっては、最後の大会です。是非、納得のいくまで頑張って、青春の輝かしい1ページを作ってほしいと思います。そう言えば、女子バレーボール部が先週の地区予選で勝ち、県大会に出場することが決まりました。10年ぶりだそうです。おめでとうございます。是非、県大会でも頑張ってください。他の部活動も後に続いてほしいと思います。

 さて、話は変わりますが、今週から3者面談が始まります。3者面談では3年生は勿論ですが、1、2年生も将来の話、進路についての話が出ると思います。ですから今日は進路についてお話したいと思います。

 幼い頃、小学校の頃などは、たいてい自分というものがよくわからないまま、夢や憧れだけで自分の将来を想像します。最近の小学生の男子の一番人気は、サッカー選手、女の子はパティシエだそうです。皆さんも小学生の頃は、そんな夢を描いていたことでしょう。私の場合、小学生の頃から海外に興味があったので、将来外交官になって、世界を飛び回りたいなどと思っていました。また、中学生になると「NHKに入ってニューヨーク支局の特派員もいいな。」などとぼんやり思っていました。

  しかし高校生になると、かなり現実的になります。自分の実力、性格、家庭の事情などが冷静に見られるようになります。私も高校生になると「自分には一流の国立大学に進学し、外交官試験にパスできる力なんかないのではないか。」「性格的にマスコミに向いていないのではないか。」そんなことを思い始め、かなり現実的な将来を考えるようになりました。結局、好きな英語の勉強を続けたくて大学は英文科に進み、好きな英語を高校生に教えたいと思うようになり高校の英語の教師になりました。この道で行こうと決心したのは大学2年生の頃でした。勿論その決断には、現実的な家庭の事情もありました。前にお話ししたとおり、私の家は父親の会社が倒産し経済的には苦しく、海外への留学や大学院に進学する余裕などありませんでした。大学に入るころになれば、そういった家庭の現実は当然よく理解できました。

 皆さんも、高校生ですから、自分の実力、性格、家庭の事情などを冷静に見て、かなり現実的な自分の将来像を描いているかもしれません。3年生は特にそうかもしれません。しかし今日、私が皆さんに言いたいのは、もう高校生なのだから将来について現実的になり、夢を諦めろということではありません。むしろ、その逆です。もし皆さんに「大好きなものがあり、それを使って仕事をしたい」というものがあれば、簡単に諦めないでほしいということです。チャレンジしてほしいということです。うまくいかないかもしれません。でも状況が許せばチャレンジしてほしいです。例えば、ダンサー、声優、ミュージシャン、デザイナーなど、才能と運に恵まれた一握りの人しか活躍できない世界では、業界の厳しい現実があり挫折することもあるかもしれません。でも長い人生、そういう挫折も決して無駄にはならないと思います。

  4月24日の埼玉新聞にデザイナーを目指して専門学校に進学した、保坂めぐみさんという人の記事があったので紹介したいと思います。保坂さんはデザイナーを目指して専門学校に進みました。専門学校在学中は、コンクールに何度も入賞するような実力があり有望な学生でした。しかし卒業する時期は不況と重なって、デザイナーの求人がほとんどなく、デザイナーとしての就職は断念したそうです。今は建築関係の仕事をしているそうですが、保坂さんはこう振り返っています。

「デザイナーになれなかったのは残念でしたが、目標に向かって本気で勉強した日々は、無駄だったとは思っていません。実習やコンクールの過程をこなす中で、仕事の進め方がうまくなりました。頑張ってもうまくいかないことも多い。そういう時の我慢のしかたや、他人への頼り方も学べました。そんな経験は今の仕事でも自分を支える軸になっています。」

 この保坂さん言葉を是非、覚えておいてください。目標に向かって本気で取り組んだ経験は、たとえ目標が達成されなくても決して無駄にならないということです。勿論、リスクを背負ってチャレンジをするには周りの人々、特に家族の理解と支援が必要です。今日から始まる3者面談は、そんなことを家族の人々や担任の先生とじっくり話し理解してもらう時間にしてください。

 

4月全校集会校長講話

              渋沢栄一とCSR 

 早いもので新年度が始まって3週間が経ちました。気持ちを新たに学校生活をスタートさせていますか。3年生は先日も言いましたが、進路実現に向けて本気の姿を見せてください。2年生は部活動や学校行事など全ての場面において、中心的な役割を果たさなければなりません。是非51年目の所商を引っ張っていってください。そして新入生諸君はどうですか。所商生活に慣れてきましたか。部活は楽しいですか。特に授業では、初めて学ぶ商業科目に少し戸惑っているかもしれません。しかしそれは新入生全員が同じ条件です。新入生全員がゼロからのスタートです。学び始めの今がとても大切です。しっかりと学んでください。

 さて先日、5年後の2024年から発行される新1万円札に、渋沢栄一の肖像が使われるというニュースがありました。埼玉県の深谷市出身で、日本で初めての商業銀行や東京証券取引所などの創立に尽力した「日本資本主義の父」と呼ばれた人ですから、埼玉県の商業高校で学ぶ皆さんはこの機会に是非、渋沢について学び、誇りに思ってほしいと思います。

 渋沢は明治・大正に活躍したわけですが、当初、大隈重信に説得されて大蔵省に入省しますが、その後退官し実業家になります。大倉喜八郎や浅野総一郎といった当時の非財閥系の実業家と手を組んで、例えばサッポロビール、帝国ホテル、東洋紡、みずほ銀行など、今でも各業界をリードする大企業の創立にかかわりました。彼が生涯でかかわった企業の数は500社とも言われています。

  また同時に彼は、社会貢献活動にも熱心に取組み、日本赤十字社、東京慈恵会などの財団法人や大学の設立に力を入れ、生涯で600の福祉や教育関係の社会事業にかかわりました。

 なぜ彼が社会貢献事業に熱心だったか。それは彼が生涯貫いた理念が、「道徳と経済は両立する」ということだったからです。つまり私利私欲ではなく公の利益を追求する「道徳」と、利益を求める「経済」が事業において両立しなければならない、というもので、これを「道徳経済合一説」と言います。代表的な彼の著書「論語の算盤」の中で書かれています。事業をする上で、常に社会貢献や多くの人の幸せにするといった公益を追求しながら、同時に利益を上げていくという理念です。簡単に言えば、「経済は良い社会のためにある」と言うことです。

 なぜこの話を今皆さんにしているかと言うと、実は渋沢栄一のこの思想は、現代の社会で大変注目されているからです。グローバル資本主義、新自由主義といった過度に利益を追求する現在の市場経済の在り方、そしてその結果、格差が広がる今の資本主義社会に対する懸念から、今この渋沢栄一の理念が見直されています。

 皆さんはCSRという言葉を知っていますか。Cooperate Social Responsibility の略で、日本語にすると「企業の社会的責任」ということです。すなわち企業が倫理的な観点から事業を通じて、自主的に社会に貢献する責任のことです。

 最近では、環境問題などの社会的課題に、それぞれの企業が自社の強みを活かして解決に当たる、そしてそれをビジネスに繋げ、会社が発展するチャンスとして捉る。そんな積極的なCSRの取組みをする企業が増えてきました。また国や銀行、そして投資家も、環境問題などに積極的に取り組む企業に投資するという傾向になってきています。

 渋沢栄一から100年以上が過ぎ、これからの経済社会は、渋沢の掲げた理念を実践していかないといけないと人々は気づき始めたのです。それはそうしないと、もしかして地球そのものが持続しないという危機感からかもしれません。

 商業高校に学ぶ皆さんは、是非、渋沢の理念を学び、CSRという言葉を覚えてほしいと思います。そして今後の進路選択において、大切な視点として持っていてほしいと思います。「良い企業・経済は良い社会のため」という言葉を忘れないでほしいと思います。


第51回入学式式辞

 新緑が芽吹く春、すべての生命が躍動するこのよき日に、PTA会長・坂田大作様、後援会会長・浦島健二様をはじめ、多くのご来賓の皆様方、保護者の皆様のご臨席を賜り、ここに埼玉県立所沢商業高等学校第51回入学式を挙行できますことは、本校にとりまして、この上ない喜びと深く感謝申し上げます。 

 ただいま入学を許可いたしました235名の新入生のみなさん、入学おめでとうございます。在校生、教職員一同、みなさんを心から歓迎いたします。平成の時代から令和という新しい時代が始まろうとしているこの歴史的な年に、みなさんは自らの意志でこの所沢商業高校を選び、本日晴れて入学しました。今日という日はおそらくみなさんにとって、一生忘れることのない1日になると思います。この歴史的な年に、自らの意思で、この所商の門をくぐってきたことを忘れず、充実した高校生活を送れるよう努力してください。 

 保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。心からお祝いと、お喜びを申し上げます。

 さて、新入生のみなさん。いよいよ本日から3年間の高校生活が始まります。

今みなさんにとって大切なことは、新しく始まる高校生活に対して抱いている新鮮な気持ちを、いつまでも忘れずに全てのことに全力で取り組むことです。そのスタートとなる入学式にあたり、私から心掛けてほしいことを3つ申し上げます。

 1つ目は、「大きな夢と高い志を持つ」ということです。この変化が激しく予測のつかない時代を、みずからの力で切り拓き夢をつかみ取るためには、みなさんひとり一人が学力は勿論、新しいことにチャレンジする積極性と豊かな人間性を身に付けなければなりません。自分が将来「こうなりたい」という明確な理想像を持ち、それに向けて資格取得や部活動、また学校行事においても精一杯努力してください。そうすれば、さらにその先の進路においても大きな成果を得られることは、本校の多くの先輩方が証明しています。その原動力が「大きな夢と高い志」です。大きな夢と高い志を持って、本校での3年間精一杯努力してほしいと思います。

 2つ目は、「商業の専門科目はもちろん、普通教科にも全力で取り組む」ということです。みなさんは商業を学ぶために本校に入学しました。しかしこれからのグローバルな経済社会で活躍するためには、その基盤となるビジネスに関する知識や技術を習得すると共に、さまざまな分野の学問についても学び教養を深めることが極めて大切です。高校で学ぶ内容は、これまでに比べ広く深くなりますが、まじめに努力すれば必ず自分の立てた目標に到達すると思います。

絶え間なく変化する社会の中で生きていくためには、商業の専門科目も普通教科もしっかりと学び、高い知性と幅広い教養を身に付けてほしいと思います。

 最後は、「多様な価値観を認める」ということです。グローバル社会、グローバル人材という言葉を聞いて「私には関係ない」と思う人もいるかもしれません。しかしそうではありません。この日本の社会における「内なるグローバル化」は確実に進んでいます。現在我が国には、約264万人の外国人が暮らしています。また埼玉県内の外国人も増え続け、平成30年6月末で17万4千人、県の人口に占める割合は2.4%となり約50人に1人は外国人です。さらにこの4月には、国の法律が変わり、多くの外国人が日本に働きにやってきます。また来年、東京で開催されるオリンピック・パラリンピックを契機に、世界中からさらに多くの人々が日本にやってきます。みなさんが社会に出るころには、外国人と働き共に暮らすということはあたりまえになるのです。ですからみなさんには、多様な文化、宗教、価値観に関心を持ちオープンな心で接し理解しようとする態度を養ってほしいと思います。近い未来、世界中から集まる人々と共に平和で豊かな多文化共生社会を築いていくのはまさにみなさんなのです。以上、「大きな夢と高い志を持つ」「商業科目も普通教科もしっかり勉強する」、「多様な価値観を認める」、この3点について心掛けてほしいと思います。

 最後に、保護者の皆様にお願い申し上げます。学校教育においては、学校・家庭・地域の連携が重要です。特にご家庭の協力なしには教育の成果は期待できません。私たち教職員一同、一丸となって指導にあたる所存ですが、各ご家庭におかれましても、本校の教育方針をよくご理解いただき、健康的な生活習慣や家庭学習について、ご指導いただきますようお願いいたします。

 結びに、元号が令和となる記念の年に、創立五十一年目を迎える伝統校に入学した新入生のみなさんを、心から歓迎すると共に、一人ひとりが充実した高校生活を送ることができますように念願し式辞といたします。


                      平成31年4月8日

                      埼玉県立所沢商業高等学校長

                      鈴 木 啓 修


始業式校長講話

みなさん、おはようございます。まずは、こうして無事に新年度を迎えられたことに感謝したいと思います。みなさん、元気に登校してくれてありがとうございます。

 いよいよ、今日から新年度がスタートします。ここにいる新3年生、新2年生の皆さんは、進級おめでとうございます。今日から気持ちを新たに頑張ってほしいと思います。

 今、「気持ちを新たに」と言いましたが、今年は「気持ちを新たに」するには大変、相応しい年だと思います。新しい元号も「令和」と決まり、5月1日から令和元年が始まります。今の天皇陛下の退位、そして新しい天皇の即位と、この歴史的瞬間をみなさんは目の当たりにできるわけです。是非、目にしっかりと焼き付けてほしいと思います。昭和から平成に元号が変わった30年前は、私は教員になって3年目、25歳の正月でした。あの時は、昭和天皇が崩御されての改元でしたから天皇陛下の葬儀、「大喪の礼」と呼ばれた儀式が行われ、決してお祝いムードではありませんでした。様々なイベントが中止になったり、テレビのお笑い番組が自粛されました。大喪の礼当日は学校も休みになり、テレビでその模様をずっと見ていたのを今でも覚えています。今回はおめでたい雰囲気の中で、退位、即位の儀式があると思います。一生に何回も見られることではない歴史的瞬間ですので、しっかりと見てほしいとと思います。

 その他にも、今年は多くの新しいこと、また何十年に一度というイベントが多くある年です。例えば政治で言えば、今年は、統一地方選挙と参議院選挙が重なる12年に1回の亥年の選挙です。18歳になる3年生諸君は是非、興味を持って積極的に投票に行ってください。10月には消費税が10%に、そして9月にはアジア初のラグビー・ワールドカップが日本で開催されます。そして来年には、56年ぶりの東京でのオリンピック・パラリンピックが開かれます。まさしく一生に1度か2度しか経験できないイベントが目白押しです。本当に楽しみでワクワクしますね。気持ちを新たに迎えたいと思います。

 その中でも私が気になるのは、やはり出入国管理法の改正です。今月1日に施行され、特定技能という新たな在留資格が整備されました。この改正により日本で初めて、高度な専門知識を要する仕事以外の比較的単純な仕事に、外国人が従事できるようになります。これにより、この先5年間で34万5千人の外国人が日本にやってくると政府は見込んでいます。

 私は昨年の1学期始業式でも「日本社会の内なるグローバル化」の話をしました。日本社会に住む外国人はどんどん増えています。現在、我が国には約264万人の外国人が暮らしています。264万人とは京都府の人口とほぼ同じです。また埼玉県内の外国人も増え続けています。平成30年6月末で17万4千人、県の人口に占める割合は2.4%となり約50人に1人は外国人です。この傾向は、先ほどお話しした出入国管理法の改正によりどんどん加速していくでしょう。

 みなさんが社会に出るころには、外国人と働き、共に暮らすということはあたりまえになるのです。ですからみなさんには、多様な文化、宗教、価値観に関心を持ってほしいと思います。オープンな心で接し理解しようとする態度を養ってほしいと思います。また、多様性を認める寛容な心は、なにも外国人に対してだけではありません。障害を持つ人、性的マイノリティをはじめ、自分とちょっと価値観、考え方が違う人、そういう全ての人々を寛容な心で理解しようと努力し、共存していくことがこれからの世の中を持続可能ものにしていくために大切なのです。みなさんはもうすでにそのような寛容な心、優しい心を持っていると私は信じています。また、なぜいまこの話を繰り返ししたかというと、それはこの多様性の尊重という話は、大変身近なお話だからです。今日の午後入学式があります。本校にも多様なバックグラウンドを持った新入生が入学してきます。是非、全ての新入生を温かく迎え入れ、共に所商51年目を築いていきましょう。よろしくお願いします。


3学期終業式校長講話

              1年を振り返って

まずは、先日の卒業式でのみなさんの態度が素晴らしくよかったと思います。ご協力ありがとうございました。静粛にすべき時は静粛に、歌を唄うときは大きな声で歌ってくれました。大変メリハリがあって「卒業生の門出を祝う」という気持ちがとてもこもっていました。厳粛な中でも温かさを感じるよい卒業式だったと思います。ありがとうございました。
 さて、この1年間、校長としてみなさんに始業式、終業式、全校集会などの機会にいろいろな話をしてきました。ちょっと振り返ってみたいと思います。1学期の始業式には、「日本社会の内なるグローバル化」という話をしました。この4月から出入国管理法が変わり、多くの外国人が日本へやってくる。私たちはそうした外国人と仲良くやっていく共生社会を創っていかなければならないと話しました。また今年度は、本校の50周年ということで、先人の情熱と努力に思いを馳せることが大切だと「歴史の重み」についてお話しました。

  2学期の始業式では、礼儀正しく、協調性を重んじることがグローバル人材に成長するための第一歩であると話しました。また、弓道で使われる「正射必中」という言葉を紹介し、結果にこだわらず、正しいステップを踏んで努力することの大切さの話もしました。また、SDGsの話をした時には、みなさんが今後、就職する際、企業が社会的責任をどれだけ考えているかを、企業を選ぶときの基準にしてほしいという話もしました。

 今日は今年度の最後の校長講話ですので、私が皆さんに今、一番伝えたいことをお話しします。それは、「環境のせいにしない」ということです。人間は自分にとって不都合なことが起きた時、環境のせいにしがちです。成績が悪いと「先生の教え方が悪い、授業の雰囲気が悪い」と言ったり、部活動で試合に負ければ、「顧問が悪い、チームメートが悪い」と思ったり、家庭で問題が起これば、「こんな家に生まれたくなかった」などと思ってしまう。人間は弱いものですから人のせい、環境のせいにしたくなります。私は、昨年の6月の朝礼で「反面教師」の話をしました。その時に自分の高校時代のお話をしました。私が中学生のころまでは、父親は町工場を経営しており、けっこう裕福でした。しかし、私が高校生になるころ倒産してしまい、一気にどん底の生活になってしまったという話です。自分はこのことを、なんとかくじけずに乗り越えることができたわけですが、実はこの時、私が通っていた高校のある信頼する先生が私にこう言ってくれました。「お父さんを恨んでも、環境のせいにしても何も解決はしないよ。お前がしっかりと努力して自分の人生を切り拓いていくんだ。」と。この言葉のおかげで、私は父親を恨むこともありませんでした。家庭のせいにしてなげやりになったりせずにすみました。私は「人のせいにしても、環境のせいにしても何も変わらない。人生は自分自身が切り拓いていくものだ。」と高校生ながらストンと心に落ち、前向きに頑張ろうと決心することができました。今振り返ると貴重な経験をしたなと思っています。だから私は、教員として生徒に一番伝えたいことの一つとして、よくこの話をします。今日は、今年度最後の校長講話ですのでこの話をしました。もう一度言います。「環境のせいにせず、人生は自分の努力で切り拓いていくもの」です。覚えておいてください。

  4月はもうすぐです。4月になると2年生は最上級生、1年生は学校の中心的存在の2年生になります。そしていよいよ後輩が入学してきます。新年度の準備をしっかりしてください。不都合なことが起きても、環境のせいにせず、今、自分ができること、しなければならないことをコツコツと実行してください。来年度は元号も変わり、いろいろなことが変化していく新しい時代を迎えます。全てが新しくワクワクする1年にしてほしいと思います。そして51年目を迎える所商を、みんなでしっかりと築いていきましょう。

第48回卒業証書授与式校長式辞

 厳しかった寒さも和らぎ、春の息吹きが感じられるこの佳き日に、PTA会長 坂田大作様、後援会会長 浦嶋健二様をはじめ多数のご来賓、保護者の皆様をお迎えし、ここに埼玉県立所沢商業高等学校第48回卒業証書授与式が挙行できますことは、卒業生はもとより、在校生、教職員にとりましても、誠に大きな慶びであります。ご臨席をいただきました皆様方に心から厚く御礼申し上げます。

 卒業証書を授与された226名の卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。入学以来、3年間の努力が実を結び、めでたく卒業するみなさんに心からお祝い申し上げます。

 みなさんは、3年前、大きな夢を持って本校の門をくぐりました。初めて学ぶ専門科目に、最初は不安で戸惑う人も多かったと思いますが、みなさんは未来の社会を担う有為な職業人を目指して、授業はもちろん、補習や家庭学習に精力的に励み、簿記や情報処理をはじめ、多くの資格を取得しました。そして、学校生活の様々な場面において、目標に向かって努力すれば、おのずと良い結果を得ることができるということを体験し、「自信」という大きな財産を得たことと思います。

 日々、悩みながらもやり抜いた部活動。本気になって取り組んだ文化祭や体育祭。また進路で悩んだ時など、いつもそばにいてくれたのは、友や先生でした。みなさんは、この3年間、多くの人に支えられて、ここまで来ることができました。これからもみなさんは、ひとりで生きていくことはできません。多くの人とのかかわりの中で生きていくのです。本校で出会った友や先生を生涯、大切にしてください。きっと卒業後も大きな力になってくれると思います。そして、みなさんの最大の理解者であり、これまでいつくしみ、育んでくれた御家族への感謝の気持ちを決して忘れないでください。

 卒業は、みなさんの長い人生における大きな節目であります。思いを新たに、次のステージに進む旅立ちの日であります。この旅たちの日に、はなむけの言葉として、私から2つのことをお願いしたいと思います。

 1つ目は、「共感する心を持つ」ということです。これからみなさんは、新しい世界に羽ばたいていきます。新しい環境に身を置き、新しい多くの人々と出会うことになります。自分と全く違った考え方、価値観を持った人と出会うことでしょう。また、異なった文化や習慣、言語や宗教を持った人々とも、共に生きることになるかもしれません。そんな時、「この人は自分と違う」といって、理解しようとすることを諦めたり、排除したりしないでください。理解しようと努力する心、共感する心を養ってください。自分と違った価値観を認め、理解しようとする「共感力」はみなさんの人生を豊かにするだけでなく、これからの日本の社会をも豊かにするからです。

 2つ目は、「学ぶ姿勢を生涯持ち続けてほしい」ということです。みなさんは、日々めまぐるしく変化し、予測が困難な時代に生きています。今後、さらに情報化、グローバル化が進み、社会構造そのものが大きく変化していきます。今日の知識が明日には役立たなくなっているかもしれません。常に学ぶ姿勢を持ち続けることが大切です。学ぶ場は、学校だけではありません。就職する人も、これからが新しい学びの始まりだと考えてください。学ぶ意欲を持ち続けることが、有為な社会人となるための第一歩です。社会人としてスタートを切る人、さらに大学や専門学校に進む人、みなさんの進む道はそれぞれですが、それぞれの目標に向かって学び続けてほしいと思います。

 最後になりましたが、保護者、ご家族の皆様方におかれましては、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。この3年間に立派に成長されたお子様の晴れ姿を目にされ、喜びもひとしおのことと存じます。皆様には入学以来、本校の教育方針をご理解いただきまして、終始、温かいご支援とご協力を賜りましたことを心より感謝申し上げます。

 結びに本日ご臨席いただきました皆様方に改めて御礼申しあげますと共に、226名の卒業生のみなさんの輝かしい前途を祝し、今後の限りないご活躍を心から祈念いたしまして式辞といたします。

                                 平成31年3月13日

                                 埼玉県立所沢商業高等学校長

                                 鈴 木 啓 修


2月全校集会校長講話

              恵方巻きと消費者意識

 今日から2月です。3日の日曜日は節分ということで、暦の上では春になります。昔から節分には豆まきをするわけですが、最近は「恵方巻き」を食べるというのが全国的に広まっています。元々、関西の習慣だったようですが広島にあるセブン・イレブンが仕掛けて全国に広がったようです。しかし、この恵方巻きが最近、問題になっています。それは売れ残った恵方巻きの大量廃棄です。実際にどれぐらいの量が廃棄されているかデータはないようですが、先月、農林水産省が、業界団体に対し、需要に見合う量を販売するようにと通知を出しました。

  食べられる食品を捨ててしまうことを「食品ロス」といいますが、日本は世界でも有数の食品ロス大国です。日本の食品ロスは、年間推計約621万トン。これを一人あたりに換算すると、日本人全員が、毎日ごはんお茶碗1杯分を捨てているという計算です。食品ロスを減らす対策が取られている国もあります。例えば、レストランで食べ残したものを家に持ち帰るのは当たり前の国も多くあります。また、スーパーマーケットに食品廃棄の量に対して罰金を科したりする国もあります。しかし日本の対策は遅れています。

 そんな中、兵庫県の「ヤマダストアー」というスーパーが売り方を見直しました。前年の実績分だけ販売し、欠品が出ても追加販売しないようにしました。この店は新聞の折り込みチラシで「もうやめにしよう」というメッセージを発信し、「欠品の場合はご容赦ください」などの文章を添えました。すると、全8店舗中5店舗で完売し、廃棄量も減ました。そしてこの店の取組に賛同する意見がたくさん寄せられ、マスコミにも大きく取り上げられました。

 ここで大切な事、皆さんに考えてほしいことは、われわれ消費者の意識改革です。この取組はある意味で、消費者の意識改革を促したものであり、われわれ消費者が意識を変えないかぎり成功しません。欲しい食べ物が、欲しい時に手に入るのが当たり前、もし売り切れていたら文句を言う、そういう消費者の意識が食品ロスを生むのです。消費者がそういう意識でいるかぎり、お店はあまるほどの商品を棚に置き、売れ残れば捨ててしまうわけです。

 2学期の終業式に「SDGs、持続可能な開発目標」の話をしました。SDGsの17の目標の1つに「つくる責任・つかう責任」というのがあり、この食品ロスの削減も目標となっています。

 皆さんも是非、消費者として「意識改革」をしてほしいと思います。欲しい食べ物が欲しい時に手に入るのが当たり前という意識は変えなければなりません。スーパーやコンビニに行って、ほしい食品が売り切れていたら、文句を言うのではなく「持続可能な地球のためにはいいことだ。」と喜べる消費者になってほしいと思います。商業を学ぶ皆さんには、社会に一石を投じる企業に注目し、賢明な消費者であってほしいと願っています。

3学期始業式校長講話

人類史上初の高校生からスマホあたりまえ世代?

 

 新年明けましておめでとうございます。冬休みはどうでしたか?楽しく充実した日々を過ごせましたか?まずは大きな事故もなく、こうして3学期の始業式が迎えられることを大変嬉しく思います。

 2019年という新しい年を迎えました。今年は、一生に何度も経験できるわけではない大きな変化の年です。君たちも知っているとおり、5月1日に新しい天皇陛下が即位されます。平成が終わり、新しい元号がスタートします。

 この年末・年始には「平成最後の…」という言葉が飛び交い、テレビや新聞ではこの平成という30年間を振り返る特集番組や記事が多くありました。そこで今日は、この平成という時代の、君たちに身近な「通信機器・通信サービス」の進化について見てみたいと思います。

 スマートフォンがこの世に出現したのはいつだか知っていますか?およそ10年前です。アップルのアイフォンが日本で発売開始になったのは、平成20年、今からわずか11年前のことです。君たちが小学校1、2年生の頃だと思います。そして同じ年にフェイスブック、ツイッターが日本版のサービスを始め、2年後の平成22年にインスタグラムが登場しました。そして今や日本人の2/3、約7,800万人が使っているラインは平成23年、今からたった8年前にサービスを開始しました。

 このことで気が付くと思いますが、君たちにとって物心ついてから当たり前のように使っている通信機器、通信サービスは、ほとんど、この10年ぐらいで世の中に現れたのです。

 そういう意味で物心ついてから普通に、スマホでラインやツイッター、フェイスブックなどを使う君たちは、まさに人類史上最初の「高校生スマホ世代」なのです。

 ちなみに所商の先生で最も若い穐本先生でさえ、高校時代にはスマホは持っていなかったそうです。大学生になって初めてスマホを持ったと言っていました。穐本先生が中学校3年生のころに、アイフォンが日本に上陸したわけで、まだ当時は、高校生でスマホを持っている人は大変少なかったのだと思います。

 君たちと5歳ぐらい違うだけで、全く違う世代になってしまう、それほどこの10年の通信機器、通信サービスの進歩は激しいのです。そんな激しい進歩の中、繰り返して言いますが、君たちはまさに、高校生でスマホが当たりまえの人類史上最初の世代なのです。

 スマホは、本当に世の中を便利にしました。出かける時に、電車の経路、時間、料金を一瞬にして調べることができます。スマホを駅の改札にかざして、電車に乗り、電車の中でスマホで音楽を聴き、途中コンビニに買い物をして、スマホで支払います。スマホ1つで何でもできる時代になりました。

 しかし同時に、スマホにはマイナスの側面もあります。私が一番、厄介だと思うのはSNSです。なぜSNSが厄介かと言うと、それは能動的でないからです。自分の意志で主体的に使うことができないからです。先日、テレビである人が、「SNSで人と繋がるというけど、実は繋がれているのではないか。」と言っていました。そのとおりだと思います。すなわち自分の意志で使うのではなく、SNSによって人と繋がれ、縛られているのではないかと感じてしまいます。君たちはこれからの長い人生、ずっとSNSに繋がれ、縛られて生きていくのかもしれません。少なくとも何らかの工夫や努力をしないとそうなってしまいます。もしかしたら君たちの中にも、実は正直に言うと「少しスマホから離れたいな、SNSから解放されたいな」と思う時があるのではないかと思います。

 だからこそ、君たち、人類史上初の「高校生からスマホ当たりまえ世代」としての責任があると思います。このまま、1日24時間、1年365日、スマホに縛られていいのか、能動的に主体的にスマホと付き合うにはどうしたらいいのか。そんなことを考えていくのは君たち世代の責任であります。

 この10年間のテクノロジーの進化を見れば、この先の10年でどんな新しい技術が生まれ、世の中がどのように変化していくのか、想像もつきません。私のような年代の人間からすると、ちょっとした「恐ろしさ」さえ感じてしまいます。

 君たちはこれから、10年、20年、30年、40年と長い間、世の中の主役として活躍していくわけです。人類史上初の「高校生からスマホ当たりまえ世代」の責任として、テクノロジーとうまく付き合う方法を見出してほしいと思います。また個人として、あるいは組織としての何らかのルールづくりに参画してほしいと思います。時には「これは私には必要ない」と能動的に取捨選択をしてほしい、そしてその個人の選択を周りの人々が尊重する世界を創っていってほしいと切に願っています。

 3学期は忙しいです。1、2年生は今月末に検定試験があります。3年生諸君は学年末考査が控えています。スマホと上手に付き合い、時間を大切にして頑張ってください。

2学期終業式校長講話

SDGs

 

 2学期も今日で終わりです。9月からの4ヵ月はどうでしたか?自分が満足できる生活が送れましたか?今回、成績のふるわなかった約70名の生徒諸君は、特にしっかり反省し、生活態度を改め3学期がんばってください。

 先日、進路指導部から12月19日現在の進路状況の報告がありました。その報告によると195名の3年生が進路先を決めているそうです。就職が102名、進学が93名だそうです。残り約30人はこれからだそうです。是非、がんばって卒業までに進路先を決めてください。また、3年生全員にお願いです。卒業まで所商生としての自覚を持って生活してください。

 今週の火曜日に3年生が2年生の教室に行って進路決定までの経験を語る進路報告会がありました。そこでほとんどの3年生が2年生に話していた事は「遅刻、欠席をしないこと。日頃からしっかり勉強してある程度の評定平均をキープすること、資格をたくさん取ること」でした。これは就職でも進学でも変わらない事で、日頃から、先生方が諸君に言っていることだと思います。しかし実際に進路を決めた3年生の先輩から聞くと身近に感じますよね。是非、1、2年生諸君は、この先輩のくれたアドバイスを心に留めて、生活してほしいと思います。

 さて、今日はSDGsについてお話したいと思います。SDGsって聞いたことありますか?日本語で言うと「持続可能な開発目標」と言います。これは、20159月に国連で開かれたサミットの中で決められた、2015年から2030年までの長期的な国際社会の共通目標です。このSDGsの特徴は、途上国も先進国も関係なく世界の全て国が取り組まなければならない目標であるということです。SDGsの前に2000年に国連で採択された「MDGs(ミレニアム開発目標)」がありました。このMDGsは「貧困の撲滅、乳幼児死亡率の削減、初等教育の普及、エイズやマラリアの蔓延防止など、主に発展途上国の問題を解決することが目標でした。しかし2015年にある程度、この目標が達成されたので、MDGsに変わる新たな世界の目標として定められたものです。

 この新たな目標で解決すべき一番の深刻な課題は何だかわかりますか?そう、地球温暖化、気候変動です。地球温暖化の問題は深刻です。我が国でも今年の異常気象、度重なる災害が発生し、諸君も実感したと思います。しかも、この問題は先進国だけ、途上国だけでは解決できません。世界全体で取り組まなければならない問題です。簡単に言えばこのSDGsは、地球が持続するための目標と言っていいと思います。

 日本政府も2016年5月に推進本部を内閣に立ち上げ、実施指針を決定したりしていますが、いち早くSDGsに注目し取り組んでいるのは経済界です。君たちに今、SDGsの話をしているのはなぜか?それは企業が今、真剣にこのことに取り組んでいるからです。もうすでに世界の企業は脱炭素、CO2を排出しない方向に舵を切っています。投資家や、金融機関は、このSDGsを基準としてどれだけ環境問題に取り組んでいるか、社会的責任を果たしているかで企業を評価し投資を決めています。

 君たちがいずれ社会に出て、企業に勤める時には、どの企業も地球環境を守る事業展開、CO2を排出しない取組を会社の経営方針の中心に据える時代になります。そうしないと企業として生き残れない世界になるのです。さらに、これを主体的に考えれば、君たちが企業を選ぶ時、環境問題をどれだけ考えている企業なのかを選択の基準にしてほしいと思います。その企業が社会の持続可能な発展にどれだけ貢献しているかをよく見てほしいと思います。そういう視点を会社選びの際、加えてほしいと思います。 

 そして、この話を君たちにするもう一つの理由は、君たちが商業高校の生徒であるからです。今回、新しくなった学習指導要領の商業教育の目標は、「経済社会の健全で持続可能な発展を担う職業人の育成」とあります。商業高校の生徒である君たちはこの教育目標「経済社会の健全で持続可能な発展を担う職業人」になるのだという自覚を持ってほしいと思います。君たちがいずれ結婚し、子供ができ、そして孫ができる頃にもこの地球が持続しているためには君たちの考え方、生き方が大変、大事であるということを忘れないでください。是非、興味を持って勉強してみてください。ちなみに最近、所商の図書館にも「知っていますか?SDGs」という本が入りましたので、是非読んでみて下さい。

 それでは、この冬休み、クリスマスやお正月と楽しいことがいっぱいありますが、節度ある生活をして、1月8日に元気に登校してください。


創立50周年記念式典式辞

                  式辞

              

 立冬も過ぎ、校庭のイチョウの木々も鮮やかに色づき始めた、このよき日に、埼玉県教育委員会県立学校部長 渡邊 様、埼玉県議会議員 柳下 礼子 様、西山 淳次 様、岡田 静佳 様をはじめ、多数の御来賓の御臨席を賜り、本校創立50周年記念式典が、ここに盛大に挙行できますことは、本校にとりまして、この上ない喜びであり、教職員を代表して深く感謝申し上げます。

 本校は、昭和44年4月に全国でも数少ない小学科制の商業高校として1学年6学級、生徒数291名をもって開校いたしました。創立時は、商業科、経理科、そして県下初の国際関連学科としての貿易科の3学科を設置しスタートしました。昭和46年、情報教育の急速な普及に伴い、情報処理科を増設し、平成6年から7年には、本県の商業教育に関する諸課題を踏まえ、国際流通科、ビジネス会計科、情報処理科に学科を再編し、外国語教育やソフトウエア教育に重点を置く新しいタイプの商業高校づくりを目指し、常に時代の先を行く先進的な取組を実践してまいりました。コンピュータの導入をはじめ、複数の外国人講師による英語運用力向上のための授業、LL教室による音声中心の英語学習、インターネットを活用した海外との交流など、今では多くの学校が実践し、当たり前になった取組の、いわば先駆者としての役割を果たしてまいりました。さらに、国際理解教育にも力を入れ、多くの国々から交換留学生や教育視察団等を積極的に受け入れ、平成10年には、ニュージーランドの高校と姉妹校提携を結び、生徒、教職員の相互訪問が行われました。昭和45年の「商業高校におけるLL利用の英語指導について」という県教育委員会からの研究指定を皮切りに、教育課程研究、防災教育推進校、交通安全教育推進校など、様々な国や県の研究指定を受け、推進校、研究指定校として研究開発を行い、その研究成果を発表することで、本県の専門高校教育の質の向上に貢献してまいりました。

 部活動においては、野球部の3度にわたる甲子園出場をはじめ、昨年には商業高校英語スピーチコンテストにおいて全国大会決勝進出など、多くの生徒がそれぞれの活動の場で努力し、輝かしい成果を収めております。

 これも、教職員、生徒の努力はもちろんのこと、埼玉県教育委員会をはじめ、PTA、後援会、同窓会、地域の関係各位のご支援、ご協力の賜物と、心より感謝し、御礼申し上げます。 

 現在、我が国は大きな転換期にあります。急激な人口減少、超高齢化社会による人手不足と外国人材の活用、人工知能の発達や第5次産業革命の到来など、社会を取り巻く環境は大きく変わり、日本経済を支えてきた仕組みや社会の制度にも大きな変化が求められています。教育においても、新しい学習指導要領の導入や高大接続改革など高校における「学び」そのものの見直しが迫られる大転換期を迎えています。このような大転換期に創立50周年を迎えた本校は、この歴史的な節目に、改めて創立時の本校の「ミッション」を振り返り、原点に立ち返りたいと考えております。そして、これから激しく急速に変化していく社会が本校に求める「ミッション」、「所商らしさ」を明確にしていきながら、情報化、グローバル化に対応した、持続可能な社会の担い手となる職業人の育成を目指し、教職員、生徒、保護者が一丸となって次の50年に向けて歩んでまいりたいと存じます。

 結びに、創立以来、本校の発展にご支援いただきました関係者の皆様に重ねて感謝申し上げるとともに、今後とも、一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。

平成30年11月17日

埼玉県立所沢商業高等学校長 鈴木 啓修

   


 

 

 

11月全校集会校長講話

               日本の学校はすごい!
みなさん、こんにちは。

中間考査も終わり、いよいよ11月になりました。今月は、創立50周年の記念式典があります。この50年間、所商のためにがんばってくれた先輩の情熱と努力に感謝し、一緒にお祝いしましょう。

さて今日は、「日本の学校はすごい」という話をしたいと思います。皆さんは、日々、行っている清掃や日直、ホームルームなど、当たり前すぎて気にしたことがないと思います。また、毎日の掃除が面倒くさいなと思う人もいるかもしれません。しかし、このような日本の学校で毎日当たり前のように行っている教育活動は、実は世界に目を向けると大変すごいことなのです。たとえば毎日、放課後に行う掃除。これは日本では小学校から中学、高校と日本全国の学校でほぼ当たり前のように行われていますが、世界を見てみると、大変珍しい活動です。先進国を含めて海外では学校の清掃は清掃員がします。清掃は清掃員のする仕事だという考え方が根付いています。生徒はいっさい掃除しません。いわば散らかしっぱなしです。知っている人も多いと思いますが、サッカーのワールドカップで、日本のサポーターが、試合が終わって、自分たちが使った座席周辺を掃除し、ごみを持ち帰る姿がSNS上で広まり、世界の多くの人々がその日本人サポーターの姿に感動して自分たちもごみを持ち帰ろうという動きが広まったという話があります。日本人にとってみれば、自分たちが使った場所をきれいにして立ち去るのは当たり前ですが、世界の人々にとっては、当たり前ではありません。スタジアムの掃除は清掃員の仕事だからです。そして、日直。これも日本人にとってみれば当たり前のことですが、今世界で注目されています。世界の学校、特にアフリカなどの発展途上国では、1クラスに生徒が50人から80人ぐらいいるのが普通です。そして先生は教壇のそばに自分の気に入った生徒を座らせ、身の回りの世話やお手伝いをさせ、言わば「助手」のように使うことが今でもあります。後ろの方に座っている生徒たちはほとんど無視、という状態です。しかし日本の日直制度では、毎日、違う生徒がリーダー的な役割を責任も持って果たします。日直の日は、先生の手伝いをしクラスから注目されます。クラスの生徒全員が日直をやることで平等に扱われます。「これはすごい」ということで今、世界で注目されています。

文部科学省に、「EDU-Portニッポン」という日本型の教育を海外で展開しようという取組があります。EDUEducation(教育)PortExport(輸出)ということです。日本の優れた教育活動を海外に輸出しようという取組です。実際、エジプトでは、2016年頃から日直、清掃、ホームルーム活動が学校で始まっていて、今年には200校ぐらいに広がっています。また、アフリカの多くの国で運動会が広まってきています。アフリカの多くの学校では、生徒や教員が一同に集まり、協力して行事に取り組むといった機会がほとんどなく、学校はまとまらず、組織として機能していない場合が多いそうです。そこで運動会をやることで、生徒、先生が一緒になって頑張る。学校がまとまるという成果が出るわけです。私もセネガルという西アフリカの国で実際に運動会の普及活動をしている青年海外協力隊に会いました。運動会を行うことで学校が一つになったと喜んでいました。

このように日本では当たり前のことが海外では当たり前でないということがたくさんあります。また、我々日本人が気づいていないことが実は世界の人々にとってはすごいこともたくさんあります。また、その逆もたくさんあると思います。外国のある国では当たり前のことが日本人にとっては全く当たり前でないことがたくさんあると思います。そんな視点をいつも持ってほしいと思います。

これから、多くの外国から来る人々とともに働き、暮らしていく共生社会に生きていく君たちにとって、是非、異文化を理解し受け入れ、また、日本の良いところを伝えていける大人になってほしいと思います。

 


 


 

10月の朝礼 校長講話

                 「正射必中」
みなさん、おはようございます。

早いもので10月になりました。こらからいよいよ秋が深まってきます。秋と言えば、「実りの秋」という言葉があります。これまで、精魂を込めて育ててきた作物が実を結び収穫の時期を迎えるという意味です。

 これは君たちの所商生活でも言えることです。春から勉強、部活、学校行事と様々な場面で努力してきたことがいよいよ実を結ぶ、目標にしてきたことをかなえる季節です。特に3年生諸君にとっては、3年間、コツコツと努力してきたことが実を結ぶ時です。

 そこで今日、お話ししたいのは、「正射必中」という言葉です。これは弓道で使われる言葉で、弓道部の諸君はもちろん知っていると思います。「正しい射法で射られた矢は、必ず中る」という意味です。そして正しい射法は正しい姿勢から始まると教えています。

 なぜ、この言葉を紹介するかというと先日、ある新聞でジェローム・シュシャンという人の記事を読んだからです。ジェローム・シュシャンさんはフランス人ですが、30年近く弓道にしたしみ、国際弓道連盟の理事を務め、5段の腕前のある人です。現在の仕事はゴディバジャパンの社長です。彼は最近「ターゲット」という本を出し、なぜ5年で売り上げを2倍にしたのかその秘訣を書いて注目を浴びています。

その中で彼は、「正射必中」という言葉を使っています。「正しい射法で射られた矢は、必ず中る」ビジネスに置き換えると「お客様のことを本当に考えてよい商品を作れば、結果は必ずついてくる。」「すべてのプロセスを正しく行うことを心がければ、ビジネスは必ず成功する。」と言っています。彼はこのことを弓道から学んだと言っています。「正しい行いをすれば、正しい結果がついてくる。」とてもシンプルですよね。ゴディバはチョコレートを売る会社ですが、一番の目的は、チョコレートをとおして、世界の人々をハッピーにすることだ、そのためには気軽に、便利にゴディバを買ってもらうことだということで、これまで会社の中にあったプライドを捨てて、コンビニで商品を売ったりして大成功しています。

 私たちは、とかく結果にとらわれて、冒険ができなかったり、結果によっては、喜んだり、意気消沈したりします。結果にこだわらず、それぞれのステップを正しく行うことに集中すればよいのです。

 3年生諸君は、就職活動、進学などで大変かと思います。1回や2回の失敗に意気消沈せず、正しい行いをするよう集中してください。1年生、2年生諸君は、日々正しい行いをするよう、プロセスを踏んでコツコツと集中してください。必ずや放った矢は的に命中すると思います。

以上です。


 

 

2学期始業式講話


                グローバル人材?

 夏休み中、私は就職を希望する3年生10数名に模擬面接を行いました。どの生徒も、背筋をピンと伸ばし手を膝の上に置き、大変礼儀正しく、面接を受けていました。面接をした私もとても清々しい気持ちになりました。また、面接の時だけでなく、日頃から校内で生徒諸君に元気に挨拶をしてもらうと、やはり気持ちがいいものです。礼儀正しい本校生徒を誇りに思います。これは日本ではある意味、見慣れた光景ですが、一旦、日本の外に出ると決して当たり前の光景ではありません。私はアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどの高校を訪ねたことがありますが、あまり挨拶はしてくれませんでした。また彼らの社会では目上の人の前でも足を組んだりすることにあまり抵抗はないようです。日本では考えられないことですよね。

 
 そもそも日本の礼儀正しさや他人を気遣う思いやりなどの道徳観や価値観は昔から日本の社会に根付いた伝統的な文化です。他人の感情や考えていることを言葉にしなくても敏感に察知し読み取る能力、自分がどのように振る舞うかを自分と他人との人間的関係によって決定してく文化が根付いています。社会心理学者の北山忍という人がこれを「相互協調的自己観」と呼んでいます。日本をはじめてとして東アジアでみられる自己観であると言っています。これは言語習慣を見ても明らかです。英語は一人称を示す言葉、すなわち、自分のことを示す言葉は
"I"の一語しかありません。しかし日本語は「私、僕、俺」など相手との関係はその場の状況によって敏感に使いわけます。先生が生徒の前で、自分のことを「先生」と呼んだり、子供の前で父親が「お父さんは…」と言ったりするのは日本語だけの特徴であり言葉からも人間関係を重視するこの社会の規範が見えてきます。

 
 このような協調性を重んじ、自分と他人との関係性を大事にする習慣は日本の伝統的な文化・価値観であり、大切にしなければならないと私は思っています。しかし戦後、この日本的な文化・価値観は否定される傾向にありました。「日本人は同調主義的で権威に弱い」と戦前の価値観は全て悪いものだと主張する、いわゆる進歩的知識人といわれる人々から批判されてきました。戦前の軍国主義や全体主義はこのような日本社会にある体質が原因であり、これからは欧米のように主体性を持ち確固たる自己を備えた近代的個人に日本人は変わらなければならないとされました。さらに
1990年代後半からの「構造改革」そしてその後の世界的に急速に広まるグローバル化がこの流れを決定的にしました。ヒト・モノ・カネ・サービスが国境を越えて世界中を自由に移動していく世界では、日本古来の価値観よりもグローバルな価値観、もっと言えば、アメリカの価値観でやっていかないとだめだということです。欧米型の個人主義、自律性、主体性、自己責任などの価値観が日本社会に押し付けられていきました。教育界でも「グローバル人材の育成」などと言って、主体的に行動し、自己主張ができる人材を育てようとしています。でも本当にそれでいいのでしょうか?日本人が長年、受け継いできたこの価値観を失ってもいいのでしょうか?私はちょっと違和感を持ちます。もちろん自分の意見や考えを言葉にして伝えること、議論をすることは大切ですが、「落としどころ」を見つける知恵も必要です。主体的に学び、行動していくことは大切ですが、周りと協調していく配慮も必要です。また、今世界を冷静に見渡すと、このグローバルスタンダードは行き詰ってきました。世界のいたるところで、自国の価値観、文化を取り戻そうという動きは様々な形で現れてきています。そしてもっと言うと、日本の伝統的な価値観が世界中で注目されています。私が訪問した発展途上国の多くでは、日本人の真面目さ、勤勉さ、正直さを尊敬の念を持って見くれました。「おもてなし」という言葉に代表される他人のことを気遣う優しい心が今、世界の人々を惹きつけています。ですから君たちには、是非、真面目で勤勉で礼儀正しく、人の気持ちを察することのできる優しい所商生でいてほしいと思います。それこそが君たちが「グローバル人材」に成長するための第一歩だと私は信じています。

 
 最後に日本人女性で初めて国連事務次長・軍縮担当上級代表に就任し、世界的に活躍している中満泉さんの言葉を紹介します。

「謙虚さや自己主張が苦手といった日本人の資質が国際舞台では足かせになるという考えを私は一蹴します。教育レベルの高さや勤勉さ、押しどころと引き際を心得たバランス感覚など、日本人であることは逆に強みになります。また、日本人は仕事を安心して任せられると思われていることも強みです。日本人は地道に努力して何でも一生懸命にやりますから信用されています。たとえば時間を守るとか、私たちの体に染みついているごく基本的なことが、国際社会で働くときには評価されるのです。」

 
 当たり前のことを当たり前にちゃんとやる、すなわち「凡事徹底」こそが「グローバル人材」になる第一歩かもしれません。

それでは2学期、行事が多く忙しい毎日になりますが、凡事徹底でがんばってください。


1学期終業式講話

                  歴史の重み

 今日で平成30年度1学期が終了します。皆さん、1学期はどうでしたか?満足できる時間を過ごしましたか?目標に向かって努力し、達成感を得ている人もいるでしょうし、そうでない人もいるでしょう。それぞれの成果と課題をしっかり見つめなおし、2学期に向かってください。特に成績で思いどおりにいかなかった人はしっかり反省し、この夏休みを過ごしてください。また、部活動を引退する3年生諸君は、部活動で学んだこと、経験を活かして、これからの進路実現に邁進してください。

 さて、今日は「歴史の重み」についてお話します。今年の夏の甲子園は100回記念大会です。7月7日の埼玉県大会の開会式で、埼玉県高野連の会長、所商の前校長の吉澤先生が「100年の歴史の中で、米騒動や戦争などで中止になったりして時代に翻弄される時もあった。しかし先人の努力で100回大会を迎えることができた。野球ができる幸せと『歴史の重み』を感じてプレーしてほしい。」と話されていました。調べてみると、大正7年には米騒動で中止、昭和17年から20年までは太平洋戦争のため4年間、甲子園は中断されました。確かに時代に翻弄されながらも先人の情熱と努力で、今年100回大会を迎えられたのだと思いました。所商も今年、50周年を迎えます。甲子園と同じように多くの先人、先輩方の情熱と努力で50年を迎えられたのだと思います。諸君も先輩の情熱と努力に感謝し、今この所商で学べる幸せと「歴史の重み」を感じてほしいと思います。また次の50年の歴史を積み上げていく一人ひとりであることを自覚してください。

 

 どんな行事や組織にも歴史があります。当然、国にも歴史があり、この日本という国にも長い歴史があり、私たちはその「重み」を感じなければなりません。諸君はSNSなどで、同時代に生きる人々との「横」のつながりに日々、夢中になっていると思います。もちろん、この同じ時代に生きる世界中の多くの人々と繋がっていくことはいいことです。しかし、私たちには、過去・現在・未来という時の「縦」の繋がりがあるわけです。よく考えてみると、そもそも私たちの命は、過去と繋がっている、つまり両親、祖父母、その両親と過去の人々の命があってこそ、私たちは今、ここに存在しているのです。そんな時間的な「縦」のつながりに思いを馳せることも大切でしょう。夏という季節は、我々日本人にとって、歴史を振り返るのに相応しい季節だと思います。8月6日の広島、9日の長崎への原爆投下、そして8月15日の終戦記念日と、先の太平洋戦争を思い返し、先人の体験した悲劇や苦労に思いをはせ、平和について考えていく機会を与えられる季節です。毎年、夏休み中には、先の戦争の映画やドラマ、ドキュメンタリーなどが多くテレビなどで流されます。意識して関心をもって見てください。

  

 最後に私が最近読んだ本を一冊、紹介します。藤原ていという人が書いた「流れる星は生きている」という本です。この作品は、藤原ていさんが3人の幼い子をつれて満州から日本に引き揚げてきた時の実体験を綴った小説で、戦後直後ベストセラーになり、映画やドラマにもなりました。当時、満州の気象台の職員だった、ていさんの夫は、のちに作家になった新田次郎であり、3人の幼い子の一人、当時4歳だった次男は、「国家の品格」や「日本人の誇り」などを書いた数学者、藤原正彦さんです。終戦の日から満州を出発し、ソ連が占領した北朝鮮を南下し、38度線を越え、釜山に着き、そこから日本へ逃げ帰ってくる、およそ1年かけての壮絶な体験談です。途中で多くの仲間、一緒に逃げてきた多くの人々が死んでいき、藤原家の人々も何度も死にそうになります。この作品で感じるのは、極限状態にある人間のエゴと優しさが混在する姿。子どもを生かそうとする母親の執念、辛さのあまり自分の子を虐待死させてしまう母親。様々な人間の本性が描かれています。現代の私たちと共通する人間の本性あり、深く考えさせられる作品です。また、兵隊だけでなく、戦争とは関係のない市民が、こうやって戦争を乗り切り、命をつないできたという、まさに「歴史の重み」を感じさせる作品です。図書館に寄贈しますので、是非、読んでみてください。

  

それでは、9月3日に全員、元気な顔を見せてください。

 

所商PTAだより 第103号 あいさつ

             相互理解

 この度、第18代校長として着任いたしました鈴木啓修です。保護者の皆様には、日頃より本校の教育活動について、ご理解をいただき温かいご支援をいただいていることにまずは感謝申し上げたいと存じます。日々有難うございます。

 さて、私はこの3月末までの2年間、独立行政法人国際協力機構(JICA)に長期研修という形で出向しておりました。海外に目を向けない内向きな若者が増えてきていると言われる中(実際のところ青年海外協力隊の応募数は年々減少しています。)、少しでも国際協力人材を育成するため、学校や教育委員会と連携して国際理解教育、開発教育の推進をしていくことが私の主な仕事でした。教員になって32年、初めて学校という教育現場を離れ全くの別世界に身を置くことになり、戸惑うことも多かったのですが学びも多くありました。その1つに「学校の常識と学校外の常識は大きく違う」ということでした。JICAのオフィズで周りの人に「学校の先生は電子メールの返信が遅い。朝に送信したメールの返信が夕方になる。」とよく言われました。たしかにJICA職員はデスクワークですから電子メールでのやり取りが主で大変迅速です。しかし、教員は教室で授業をするのが仕事、デスクでメールをチェックするのは夕方になってしまうのは普通です。しかしデスクワークをしている社会人にしてみれば数時間以内に返信がないのは非常識なようです。怠けているのではないかと思われてはいけないので、私はJICA職員には学校の教員の働き方を一生懸命、説明するよう心がけました。このようなちょっとした文化、習慣の違いは、いくらでもあります。また、こうしたちょっとした違いがお互いの誤解を生む原因になるのかもしれません。

 保護者の皆様もきっと、「学校って、教員って私の常識と違う!」と思ったことがあるかもしれません。そんな時、遠慮せず学校に聞いてほしいと思います。お互いに言いたいことを言わず我慢してしますのが一番よくないと考えています。分からない事、理解できない事を率直に尋ね、話し合い、理解しあうことこそが、学校と保護者のよい関係づくりにとって、一番の方法であると私は信じております。

 学校教育は各ご家庭のご理解とご協力なくしては成り立ちません。是非、今後も学校と保護者が同じ方向を見つめ、子供たちのために、いい教育をしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 

1学期始業式講話


この度、新しい校長として着任した鈴木啓修と申します。どうぞよろしくお願いします。

 私は平成28年から29年度、つまりこの3月までの2年間、国際協力機構(JICA)という組織に出向していました。「青年海外協力隊」という言葉を聞いたことのある人はいますか? 39歳までの若者が2年間、発展途上国に行って、現地の人々と主に働き、自分の持つ技術や知識を伝え、その国の発展に協力するボランティア事業です。JICAがやっている事業では一番知られているものですが、JICAは他にもいろいろなことをやっています。皆さん、ODAって知っていますか?政府開発援助というものです。国の税金を使って発展途上国の援助をするものです。例えば、途上国にお金を貸す、有償資金協力(円借款)や、お金を返すのが難しい国には、お金を供与する無償資金協力、日本の専門家や技術者を途上国に派遣したり、途上国から日本に技術者や行政官を呼んで、研修をしたりする技術協力などがあります。私は、市民参加協力という分野で、おもに学校の先生と国際協力、国際理解教育を繋げる仕事をしていました。

今日は、そのJICAでの2年間の経験から得たことから2点、みなさんに伝えたいことを話します。

1点目は、「異質なもの、多様なものに心を開いて、興味を持ってほしい、そして理解してほしい」ということです。外国に行くと、日本の常識では、理解できないことにたくさん出会います。アフリカの多くの国で、芋虫やバッタを食べます。中東のヨルダンでは、ヤギの脳みそを食べます。この2年間で多くの途上国の学校に行きましたが、ほとんどのトイレには紙がありません。その代わりに大きなバケツに水が入っていて、それをヒシャクですくってお尻を洗います。日本人にはちょっと難しいです。ズボンがびしょびしょになってしまいます。私は、いつもホテルからトレットペーパーを持って、カバンに入れていました。お店にいくと、店員さんはスマホばかり見ていて接客しません。約束の時間に30分遅れても遅れたことになりません。日本人なら5分遅れてもイライラしますが、彼らは全く平気です。時がゆっくりと流れている感じです。それで、彼らは平和に暮らしています。幸せそうでよく笑います。幸せって何だろう、豊さってなんだろうと考えさせられました。このような日本と違った文化、習慣は日本と関係ないと思わないでください。大いに関係あります。その理由を話します。

 日本の社会の「内なるグローバル化」という言葉があります。今後、日本に多くの外国からの人々がやってきて、日本は多様な文化を持った人々が共生する社会になるということです。具体的な数字を挙げると、日本の生産年齢人口、働く人の数は、2010年に8,137万人だったものが、50年後の2060年には、なんと半分の4,418万人になります。でもこれは、そんな先の話でなく、今すでに起きていることです。この4月にいろいろな物が値上げになりました。納豆、牛丼、ビールなど。そのほとんどの原因は人手不足による人件費の高騰、物流費の高騰です。近い将来、日本の外から来る人々の力を借りないとこの社会は維持できなくなるのです。皆さんが社会に出て、会社の中心になって働く時には、外国人と一緒に働き、共に暮らしていくことが当たり前になるのです。ですからみなさんには、多様な文化、宗教、価値観に関心を持ち、オープンな心で接し、理解しようとする態度を養ってほしいと思います。近い将来、世界中から集まる人々と共に、平和で豊かな多文化共生社会を築いていくのは、まさにみなさんなのです。

2点目は、資格取得や、技術をしっかり身に着けてほしいということです。先ほど、青年海外協力隊のお話をしましたが、実は応募する若者が年々、減っています。日本の若者が内向きになっているとよく言われますが、日本が安全でいい、テロとか危険がある外国には行きたくないと思う若者が増えていることは事実かもしれません。しかし、みなさんには是非、広い世界に出てほしいと願っています。世界の様々な場所へ行き、様々な人々と出会ってほしいと思っています。もし将来、青年海外協力隊などに参加し、世界の人々、特に途上国の人々の力になりたいと思った時、大事になるのは、みなさんが持っている技術や資格です。青年海外協力隊には、120以上の職種があります。例えば、看護師の資格があれば、途上国で看護の仕事の指導をします。教員免許があれば、学校にいって、現地の先生の指導をします。情報処理の資格があれば途上国で、コンピュータに関する技術指導ができます。スポーツで実績があれば、現地でスポーツ指導もできます。やはり、何をするにも技術、資格が大切です。そういう意味でも、この学校でしっかり勉強し、技術や資格を取得してください。

皆さんのような若者こそ、今、お話した異文化に対する柔軟な姿勢を持っていると信じています。期待しています。


第50回入学式式辞


式 辞

 

 若葉が萌える春、新しい緑が芽吹くこの佳き日に、PTA会長・坂田大作様、後援会会長・浦嶋健二様、同窓会会長・内藤和哉様をはじめ、多くのご来賓の皆様方、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、第50回入学式を挙行できますことは、本校にとりまして、この上ない喜びと深く感謝申し上げます。 

 ただいま入学を許可いたしました239名の新入生のみなさん、入学おめでとうございます。在校生、教職員一同、みなさんを心から歓迎し、お祝いいたします。みなさんは自らの意志でこの所沢商業を選び、選抜を通り、本日、晴れて本校に入学することになりました。このことは小中学校の義務教育とは大きく違うところであり、

極めて重要な意味を持っています。自らの意思でこの学校の門をくぐってきたということを忘れず、充実した高校生活を築いていくよう努力してください。 

 保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。入学する学校が決まるまで、祈るようなお気持ちで不安な日々を過ごされたことと存じます。本日、立派に成長されたわが子の晴れ姿をご覧になって、さぞかし頼もしく感じられ、安堵されていることでございましょう。心からお祝いとお喜びを申し上げます。

 さて、新入生のみなさん。いよいよ本日から3年間の高校生活が始まります。今、大切なことは、みなさんが新しく始まる高校生活に対して抱いている新鮮な気持ちをいつまでも忘れずに、全てのことに全力で取り組むことです。そのスタートとなる入学式にあたり、私から心掛けてほしいことを3点申し上げます。

 1つ目は、「大きな夢と高い志を持つ」ということです。この変化が激しく、予測のつかない時代を、みずからの力で切り拓き、夢をつかみ取るためには、みなさんひとり一人が学力をはじめ、しなやかな「生きる力」を身に付けなければなりません。大きな夢と高い志を持って、本校での三年間、未来のスペシャリストを目指して、精一杯努力してほしいと思います。自分が将来、「こうなりたい」という明確な理塑像を持ち、それに向けて努力すれば、資格取得や部活動で、さらにその先の進路実現においても大きな成果を得られることは、本校の多くの先輩方が証明しています。その原動力が「大きな夢と高い志」です。みなさんには十分な素質があります。一つ高いレベルへのチャレンジをしてください。

 2つ目は、「商業の専門科目はもちろん、普通科目にも全力で取り組む」ということです。みなさんは商業を学ぶために本校に入学しました。しかし、これからの社会で活躍するビジネス・パーソンになるためには、その基盤となる社会性や客観的なものの見方を養うと共に、さまざまな文化や学術について知識と教養を深めることが極めて大切です。高校で学ぶ内容は、これまでに比べ、広く深くなりますが、まじめに努力すれば、必ず自分の立てた目標に到達すると考えています。絶え間なく変化する社会の中で生きていくためには、商業の専門科目も普通科目もしっかりと学び、高い知性と幅広い教養を身に付けてほしいと思います。

 最後は、「多様な価値観を認める」ということです。グローバル社会、グローバル人材という言葉を聞いて「私には関係ない」と思う人もいるかもしれません。しかし、そうではありません。この日本の社会における「内なるグローバル化」は確実に進んでいます。現在、我が国には、約250万人の外国人が暮らしています。また、埼玉県内の外国人も増え続け、平成29年6月末で16万人、県の人口に占める割合は2.2%となり50人に1人は外国人です。今後、東京で開催されるオリンピック・パラリンピックを契機に世界中から多くの人々が日本にやってきます。また急激に進む少子高齢化の影響もあり、この数は増え続けていくでしょう。みなさんが社会に出るころには、外国から来た人々と働き、共に暮らすということはあたりまえになるのです。ですからみなさんには、多様な文化、宗教、価値観に関心を持ち、オープンな心で接し、理解しようとする態度を養ってほしいと思います。近い将来、世界中から集まる人々と共に、平和で豊かな多文化共生社会を築いていくのはまさにみなさんなのです。

 以上、「大きな夢と高い志を持つ」、「専門科目も普通科目もしっかり勉強する」、「多様な価値観を認める」、この3点について心掛けてほしいと思います。

 最後に、保護者の皆様にお願い申し上げます。学校教育では、学校・家庭・地域の連携が重要です。特にご家庭の協力がなければ学校教育は成り立ちません。私たち教職員一同、「チーム所商」として一丸となって指導にあたる所存でございますが、各ご家庭におかれましても、本校の教育方針をよくご理解いただき、健康的な生活習慣や家庭学習の習慣等について、ご指導いただきますようお願いいたします。

 結びに、本年度は学校創立50周年の節目の年でございます。半世紀前、埼玉県下ではじめて「情報処理科」「貿易科」など、時代のニーズに合わせて開校し、本県商業教育のパイオニアとして今日まで発展してまいりました。その伝統校に入学した新入生のみなさんを心から歓迎すると共に、一人ひとりが充実した高校生活を送ることができますように念願し、式辞といたします。

                           平成30年4月9日

                       埼玉県立所沢商業高等学校長

                               鈴木 啓修


 

校長挨拶 ~ Fulfill Your Dreams at 所商!


       "Fulfill Your Dreams at 所商!"


  埼玉県立所沢商業高校のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
 「所商」は今年、創立51年目を迎える歴史と伝統のある地域に根ざした商業高校です。半世紀前、埼玉県で初めて、コンピュータや外国人講師による英会話の授業などを導入し、本県の商業教育のパイオニアとして発展してきました。現在は、国際流通科、ビジネス会計科、情報処理科の3学科からなり最新のコンピュータ機器でICT社会をリードする人材を育成しています。優秀な卒業生も1万2千人を超え、地元産業界のみならず、さまざまな世界で活躍していることは、所商の誇りであり、財産でもあります。

 ビジネスに関する知識・技術と高い教養を兼ね備え、持続可能な社会を担うビジネス・リーダーになるために、生徒は商業の専門科目のみならず英語や国語、数学などの普通教科にも全力で取り組んでいます。商業高校では珍しく、2人のALTが配置され、グローバルな感性を持ったビジネス人材の育成を目指しています。また、1年次には30人以下の少人数授業を展開し、基礎学力の向上を図っています。さらに各学科の特色を生かした資格の取得には、学校をあげて力を入れています。その資格を活用した大学進学や、伝統の強みを生かした就職など、多彩な進路先が100%保証されていることも所商の大きな魅力です。

 部活動では、3度の甲子園出場を誇る野球部をはじめ、17の運動部、12の文化部が日々活発に活動しています。

 恵まれた環境と熱心な教師陣、そして礼儀正しく元気な生徒が所商の自慢です。みなさんの夢の実現を目指して、勉強に資格取得に、そして部活動、学校行事に所商で青春を謳歌してみませんか。                   It's a great pleasure to have YOU on board!


               


校長 鈴木 啓修