校長メッセージ

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11月朝礼校長講話

「〇〇のはずだ」のワナ

 

 みなさん、おはようございます。

 早いもので11月になりました。10月は色々なことがありました。特に台風19号や10月25日の豪雨では県内でも川が氾濫し、多くの人々が被災しました。被災された方々には、一日も早く元通りの生活に戻れるよう祈りたいと思います。11月は穏やかな月になってほしいと思います。

 また、10月には大変、嬉しいニュースもたくさんありました。その1つとして、ノーベル化学賞に吉野彰さんが、リチウムイオン電池の発明者の1人として受賞したことです。我々日本人にとって、大変嬉しい勇気づけられるニュースでした。

 しかし今日は、ノーベル経済学賞の話をしたいと思います。日本ではあまり報道されませんでしたが、今年のノーベル経済学賞は、マサチューセッツ工科大学のアビジット・バナジー教授、エスター・デュフロ教授、そしてハーバード大学のマイケル・クレマー教授の共同受賞でした。この3人は、発展途上国での貧困問題について、実証実験によって具体的な解決策を示したことが評価されました。

 これまでにも、貧困問題に関する研究でノーベル経済学賞を受賞した研究者はいますが、この3人が最も画期的だったことは、「ランダム化比較試験」という手法を取り入れたことです。この「ランダム化比較試験」というのは、医薬品開発での動物実験などで使われる試験です。具体的に言うと、ある薬を与えた集団と与えない集団とで、どういう違った結果が出るか客観的に実験する方法です。これを貧困問題の解決に応用したのです。

 この手法を貧困対策に応用すると、例えば子供たちが、なかなか学校に通うことのできない貧しい村で、ただで給食を提供するグループと、そうでないグループを比較し、どちらのグループでより多くの子供たちが学校に通うようになるか、という実験を実際に行って、その結果を比較、検証するということです。

  3人の受賞者は、このような試験を多く実施することで、とても興味深い結果が得ました。例えば寄生虫を駆除するための薬を配ったり、親に教育の大切さを教育するほうが、お金や制服を配るより学校に通う子供の数が圧倒的に増えたということが、ケニアの小学校での実験で明らかになりました。これは意外ですよね。お金や制服、教科書を与えるほうが学校に行く子どもが増えるように思いますよね。しかし実験の結果はその反対でした。

 これまでの発展途上国への援助や貧困対策は、「こうすればこうなるはずだ」という思い込みが我々先進国すなわち与える側にありがちでした。「お金や物を、たくさん援助してあげれば、貧困は減るはずだ。減らないとしたら、その国の政府が悪いか、その国の人々が怠け者なのだ。」などと与える側である私たちの傲慢な態度も、しばしば途上国援助の分野では見られました。しかし、この3人は実験の結果を通して、エビデンス、すなわち科学的根拠を世界に示したのです。思い込みでなく「こういう実験をしたらこういう結果が出ましたよ。」と世界に示したのです。この功績は、これからの途上国援助、貧困対策の改善に大きな影響を与えていくと思います。

 このことを通して皆さんに伝えたいことは2つあります。一つ目は、思い込みではなくエビデンス、科学的根拠をもとに物事を判断してほしいということです。例えば、皆さんが将来、お店を経営するとします。商品に消費税込みの価格を表示するか、消費税抜きの価格を表示するか決めなければなりません。どうしますか?多くの人が、「消費税込みの方がわかりやすくていいや」と思うかもしれません。しかし実は、アメリカのある研究者がこの「ランダム化比較試験」を活用して「消費税などの税の表示が販売にどう影響するか」という実験をしました。その結果は「税込みで表示すると税抜き表示の場合に比べ8%売り上げが下がる」というものです。つまり税抜き表示のほうが売れるという結果が出たのです。

 今や、この「ランダム化比較試験」は行動経済学をはじめ、多くの分野で活用されています。皆さんの中にも将来、大学で経済学や経営学を学ぼうと考えている人もいると思います。是非、実証実験によるエビデンス、科学的根拠を大切にする人になってください。

 ふたつめは、世の中であまりニュースにならないことも注目してほしいということです。ノーベル化学賞の吉野さんは大きく報道されましたが、ノーベル経済学賞は、日本ではほとんどニュースになりませんでした。しかし今回の授与は長いノーベル経済学賞の歴史にとって画期的な出来事です。また今後の経済学全体の方向性も大きく変える受賞であると言っていいと思います。

 世の中には情報が溢れています。テレビは勿論、ネットやSNSなど様々な媒体からニュースを得ることができます。しかし、意外と偏った情報が多いのです。ものすごく大切なニュースが日本では報道されないことも多くあります。是非、アンテナを高くし、自分の興味・関心・感性にピピっとくる情報を敏感にキャッチしてほしいと思います。

 これから秋が深まり、過ごしやすい季節がやってきます。3年生諸君は進路が決まっていく人が増えていくと思います。しっかりアンテナを高くして、自分にとって必要な情報をキャッチし、卒業後に向けて、今から準備を始めてください。

 

10月朝礼校長講話

異なるものへのリスペクト
 
 早いもので10月になりました。こらからいよいよ秋が深まってきます。秋と言えば、「実りの秋」という言葉があります。これまで、精魂を込めて育ててきた作物が実を結び収穫の時期を迎えるという意味です。

 これは君たちの所商生活でも言えることです。春から勉強、部活、学校行事と様々な場面で努力してきたことがいよいよ実を結ぶ、目標にしてきたことの結果が出る季節です。特に3年生諸君にとっては、3年間、コツコツと努力してきたことが実を結ぶ時です。それぞれにとって実り多き2学期になるよう努力してください。

 さて、いよいよラグビーワールドカップが始まりました。日本は初戦、ロシアに勝ち、優勝候補のアイルランドにも見事に勝利し、日本中がにわかに盛り上がっています。11月2日までの大会中、日本全国の12の開催都市で試合が行われ、これまでになかったラグビーに対する注目と盛り上がりを目の当たりにしています。また、この大会を観戦するため40万から50万人の人々が海外からやってきます。所沢市の人口が34万人ですから所沢市の人口より多い人々が日本にやってきます。とてもワクワクする1か月ですね。

 ところでみなさん、今回の日本代表には何人の外国出身の選手がいるか知っていますか。31人中15人です。なんと約半分が外国人選手です。日本代表チームの半分が外国人ということに違和感を持つ人は世の中にはいるようです。ネット上を見ると結構、批判的な意見も見られます。たしかに他のスポーツではあまりないですよね。調べてみたのですが、サッカー、野球(WBC)、バスケットボールなどの日本で人気のあるスポーツのほとんどの日本代表選手の条件には日本国籍を持っていることとありました。

 しかしラグビーの代表選手の条件は大変ゆるく国籍は要件ではありません。日本に継続して3年以上住んでいれば日本代表選手になれます。これはラグビー独特のルールで、その理由はラグビーの普及の歴史にあります。ラグビー発祥の国であるイギリスが世界中に植民地を持っていましたが、イギリスは植民地や元植民地中心にラグビーを広めていきました。そしてイギリス人はどこの国に行ってもその国の代表になれるようルールを決めたことがこの独特なルールの由来です。ですから日本だけでなく今回のワールドカップに参加している国のチームのほとんどが10人程度の外国出身選手を抱えています。ラグビーでは普通のことなのです。キャプテンのリーチ・マイケルもトンプソン・ルークも自分を育ててくれた日本のため、桜のジャージのために長年にわたり、体を張ってくれています。

 私はこのラグビーの文化が好きです。また、これからの日本の社会に根付いてほしい文化だと思っています。そしてこれからの日本の社会の在り方を示しているように感じます。前にもお話しましたが、これからの日本の社会は、日本人だけでは成り立たなくなります。我々が直面している深刻な人手不足が解消されなければ、これまでのような豊かな社会を持続することはできません。外国人の手を借りないと乗り越えられないのが現実です。日本に働きに来る外国人は、勿論、自分のため、祖国の家族のために働きに来るのでしょうけど、我々からすれば彼らは日本の社会を持続させるために働いてくれているのです。

 外国人との共生は、お互いの文化、習慣を理解し尊重することから始まります。今回のワールドカップで多くの外国のチームが試合後に観客にお辞儀をする姿が話題になっています。オールブラックスが始めたようですが、彼らは日本の観客の声援とおもてなしへの感謝を日本のお辞儀という形で敬意とともに伝えたいと言っていました。また日本では、まだ受け入れられない、タトゥーについても外国の選手は試合以外の場所ではなるべく隠すようにしているそうです。サモアの主将ジャック・ラム選手がこんなことを言っています。「タトゥーは僕たちの文化に根付いている。しかし日本は違う。僕たちは日本にいる。日本の文化に敬意を払わなければいけない」

 日本に来る外国人は日本の文化・風習を理解し尊重する。日本人は外国の文化・風習・宗教などを理解し配慮して受け入れる。これこそがこれからの日本が目指す多文化共生社会に必要な文化ではないかと思います。

それでは、皆さん、それぞれにとって実り多き2学期になることを祈っています。

2学期始業式校長講話

スポコン?

 おはようございます。まずは、大きな事故もなく、皆さんが元気に今日、登校してくれたことを大変嬉しく思います。

 さて、今日から2学期がスタートします。2学期は、文化祭や体育祭、また2年生諸君の修学旅行など学校行事が盛沢山です。各部活動も、2年生中心の新しい体制で、日々頑張っていると思います。学校の外を見てみると、いよいよアジアで初めて開催されるラグビーワールドカップが9月20日から始まります。その他、現在中国で開催されているバスケットボールのワールドカップをはじめ、様々なスポーツの世界的な大会が開催され、来年の夏の東京オリンピック・パラリンピックに繋がっていきます。この秋から来年の夏までもしかしたら一生で一度しか体験できないようなスポーツのビッグイベントが、つぎつぎと開催されるわけです。

 ところで、皆さんはスポーツに関する法律があるのを知っていますか?それはスポーツ基本法という法律です。スポーツ基本法は平成23年に成立した法律で、それまでの学校教育などを通じてスポーツの普及を目指すスポーツ振興法を全面的に改訂したものです。この法律では、国民生活におけるスポーツの重要性に触れ、スポーツ立国の実現をめざすと謳われています。

 この法律には前文があり、その最初の一行にこの法律のスポーツに対する理念が書かれてあります。それは、「スポーツは、世界共通の人類の文化である。」ということです。そして、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利であり、全ての国民がその自発性の下に、各々の関心、適性等に応じて、安全かつ公正な環境の下で日常的にスポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、又はスポーツを支える活動に参画することのできる機会が確保されなければならない。」とすべての人にスポーツを楽しむ権利を認めた「スポーツ権」を謳っています。また、「スポーツは、次代を担う青少年の体力を向上させるとともに、他者を尊重しこれと協同する精神、公正さと規律を尊ぶ態度や克己心を培い、実践的な思考力や判断力を育む等人格の形成に大きな影響を及ぼすものである。」とあります。ようするにルールとフェアプレイの精神を守り、勝敗にかかわらず他者を尊重する態度が基本姿勢であるとこの法律は定めています。

 ところで皆さんは「スポ根」という言葉を知っていますか?スポーツに根性の根を合わせた言葉です。精神論を振りかざし、非科学的な過酷な練習をして、不屈の闘志と根性で乗り越えていくことに価値を置く世界です。私が高校生の頃は、まさしくスポ根の時代でした。テレビドラマや漫画の世界もスポ根ものが人気でした。皆さんは知らないと思いますが「アタックナンバーワン」や「巨人の星」「柔道一直線」などがその代表作です。実際、私の経験でも部活動では、練習中は一切、水を飲んではいけない、体調が悪くても部活を休めない、先生、先輩の言うことは絶対服従という世界でした。私は風邪で咳が出ていても部活を休めず、気管支炎になってしまったこともありました。

 しかし今はそういう時代ではありません。8月27日の読売新聞に武藤芳照さんという人の「スポーツ界にも法令順守教育」という投稿がありました。この人はスポーツ・コンプライアンス教育振興機構という組織の代表理事で東京大学の名誉教授です。武藤さんによると、今の「スポコン」とは「スポーツ・コンプライアンス」のことであると言っていました。社会規範にのっとり公正にルールを守り物事を行うことを意味するコンプライアンス、すなわち法令順守の精神が大切であるということです。体罰やしごき、非科学的で理不尽な決まり事などはこれからのスポーツから排除しなければならないと武藤さんは強く主張しています。

 皆さんはこれからの長い人生、スポーツとおして心と体の健康を維持し長生きしていく時代に生きています。今日、お話しした、「スポーツ基本法」の理念を頭に入れてスポーツを楽しんでください。もちろん、自己の技術の向上や心身の成長のためには限界を乗り越えなければいけない時、スポーツ基本法の前文にある「克己心」、すなわち自分自身の欲望や甘えに打ち勝つ精神を養うことも必要であると思います。しかしそれは、あくまでも「自発性の下」であり自分自身が努力し成長しようとする意志を持つことが大切です。このことは、スポーツに限らず、あらゆる場面で必要な姿勢であると私は思います。 

 今日から2学期が始まります。勉強、部活動、学校行事などあらゆる場面で、他者を尊重し、他者と協同し、公正さと規律を尊ぶ態度や、自分の甘えに打ち勝つ精神を培ってほしいと思います。

1学期終業式校長講話

             誰がいい学校にするのか?

 今日で令和元年度1学期が終了します。皆さん、1学期はどうでしたか?満足できる時間を過ごしましたか?目標に向かって努力し、達成感を得ている人もいるでしょうし、そうでない人もいるでしょう。それぞれの成果と課題をしっかり見つめなおし、2学期に向かってください。特に成績で思いどおりにいかなかった人はしっかり反省し、この夏休みに軌道修正をして取り戻してください。また、部活動を引退する3年生諸君は、部活動で学んだこと、経験を活かして、これからの進路実現に邁進してください。

 さて、今日は「誰がいい学校にするか」についてお話します。

  私は校長として1年と4か月、所沢商業高校をいい学校にしたいと願ってやってきました。中学生にとって「是非、行きたい」と思ってもらえる学校、保護者に「是非、行かせたい」と思ってもらえる学校。地元の人たちにも「是非、応援したい。」と思ってもらえる学校になってほしいと思ってやってきました。先生方も同じ気持ちだと思います。皆さんにとっても自分の母校ですから「所商っていい学校だね」と言ってもらえばうれしいと思います。

 それでは、誰が所商をいい学校にすることができるのでしょう。正直言って、校長の力は微力です。私一人では何もできません。先生方も日々がんばっていますが限界があります。もう答えはわかっていると思いますが、所商をいい学校にできるのは、ここにいる697人の生徒です。皆さん一人ひとりです。

 世間から評価される目に見える実績、例えば進路実績、資格取得の実績、また部活動の実績、先生方は後方支援はできますが、実際に実績を作るのはここにいる皆さんです。

 そしてこうした目に見える実績は所商に対する世間の評価にとって大切ですが、それと同じぐらい、いや、もしかしたらそれより大事なことがあります。それは皆さん一人ひとりの振る舞いや人格かもしれません。

  埼玉県の東部に庄和高校という県立高校があります。5月11日の午後、庄和高校の3年生男子4人が東武線の踏切内で、自転車ごと倒れ、動けなくなっている老人をとっさの判断で救いだしました。警報機が鳴り、遮断機が下り始めている中、非常停止ボタンを押して老人を踏切の外に救出しました。その後、春日部警察からこの4人の生徒に感謝状が贈られ、大きく新聞などに報道されました。これを見た県民は、「勇敢で親切な高校生だ。庄和高校はいい教育をしているのだろう。」と学校を高く評価します。

  本校でもこの庄和高校のような新聞に載る話ではありませんが、同じような嬉しいことがありました。先日、ある会合で地元のスクールガードリーダーのボランティアをやっているおじさんに話しかけられました。スクールガードリーダーは、毎朝、小中学生の通学路に立って交通安全を見守る人たちです。そのおじさんは、「先日、所商生とすれちがったところ、その男子生徒は、ポケットに入れていた手を、すっと外に出して丁寧に『おはようございます。』と挨拶してくれました。とても気持ちよかったですよ。所商はいい教育をしていますね。私の孫には是非、所商に行ってほしいですよ。」と言われました。私は校長として、本当に嬉しい気持ちになりました。もしこれが、自転車マナーなどを注意されて「うるせーじじー」などと言っていたら、言われたおじさんは「なんという高校生だ、所商はとんでもない学校だ。うちの孫には絶対、所商には行かせない」となるでしょう。

  学校の評判、評価とはそういうものです。ここにいる697人一人ひとりの振る舞い、言動、人間性が所商の評価を決めてしまうのです。皆さんの振る舞い次第で、「素晴らしい高校生だ。所商はいい教育をしているな。」となるのです。実際に「体験入学」や「学校説明会」のアンケートの結果を見ると、「在校生のお話や態度が大変よかった。とても参考になった。もっと在校生の話を聞きたい」という意見が圧倒的に多いのです。皆さんが所商の評価そのものなのです。

  明日から、約40日の長い夏休みが始まります。是非、所商っていい学校だなーと思ってもらえる振る舞いをしてほしいと思います。

  それでは、9月2日に全員、元気な顔を見せてください。以上です。


6月朝礼校長講話

                夢を諦めないで

 
 1学期の中間考査も終わり、先週からまた平常授業の日々が始まりました。部活動も再開し、これから夏にかけてインターハイ予選などが始まります。3年生にとっては、最後の大会です。是非、納得のいくまで頑張って、青春の輝かしい1ページを作ってほしいと思います。そう言えば、女子バレーボール部が先週の地区予選で勝ち、県大会に出場することが決まりました。10年ぶりだそうです。おめでとうございます。是非、県大会でも頑張ってください。他の部活動も後に続いてほしいと思います。

 さて、話は変わりますが、今週から3者面談が始まります。3者面談では3年生は勿論ですが、1、2年生も将来の話、進路についての話が出ると思います。ですから今日は進路についてお話したいと思います。

 幼い頃、小学校の頃などは、たいてい自分というものがよくわからないまま、夢や憧れだけで自分の将来を想像します。最近の小学生の男子の一番人気は、サッカー選手、女の子はパティシエだそうです。皆さんも小学生の頃は、そんな夢を描いていたことでしょう。私の場合、小学生の頃から海外に興味があったので、将来外交官になって、世界を飛び回りたいなどと思っていました。また、中学生になると「NHKに入ってニューヨーク支局の特派員もいいな。」などとぼんやり思っていました。

  しかし高校生になると、かなり現実的になります。自分の実力、性格、家庭の事情などが冷静に見られるようになります。私も高校生になると「自分には一流の国立大学に進学し、外交官試験にパスできる力なんかないのではないか。」「性格的にマスコミに向いていないのではないか。」そんなことを思い始め、かなり現実的な将来を考えるようになりました。結局、好きな英語の勉強を続けたくて大学は英文科に進み、好きな英語を高校生に教えたいと思うようになり高校の英語の教師になりました。この道で行こうと決心したのは大学2年生の頃でした。勿論その決断には、現実的な家庭の事情もありました。前にお話ししたとおり、私の家は父親の会社が倒産し経済的には苦しく、海外への留学や大学院に進学する余裕などありませんでした。大学に入るころになれば、そういった家庭の現実は当然よく理解できました。

 皆さんも、高校生ですから、自分の実力、性格、家庭の事情などを冷静に見て、かなり現実的な自分の将来像を描いているかもしれません。3年生は特にそうかもしれません。しかし今日、私が皆さんに言いたいのは、もう高校生なのだから将来について現実的になり、夢を諦めろということではありません。むしろ、その逆です。もし皆さんに「大好きなものがあり、それを使って仕事をしたい」というものがあれば、簡単に諦めないでほしいということです。チャレンジしてほしいということです。うまくいかないかもしれません。でも状況が許せばチャレンジしてほしいです。例えば、ダンサー、声優、ミュージシャン、デザイナーなど、才能と運に恵まれた一握りの人しか活躍できない世界では、業界の厳しい現実があり挫折することもあるかもしれません。でも長い人生、そういう挫折も決して無駄にはならないと思います。

  4月24日の埼玉新聞にデザイナーを目指して専門学校に進学した、保坂めぐみさんという人の記事があったので紹介したいと思います。保坂さんはデザイナーを目指して専門学校に進みました。専門学校在学中は、コンクールに何度も入賞するような実力があり有望な学生でした。しかし卒業する時期は不況と重なって、デザイナーの求人がほとんどなく、デザイナーとしての就職は断念したそうです。今は建築関係の仕事をしているそうですが、保坂さんはこう振り返っています。

「デザイナーになれなかったのは残念でしたが、目標に向かって本気で勉強した日々は、無駄だったとは思っていません。実習やコンクールの過程をこなす中で、仕事の進め方がうまくなりました。頑張ってもうまくいかないことも多い。そういう時の我慢のしかたや、他人への頼り方も学べました。そんな経験は今の仕事でも自分を支える軸になっています。」

 この保坂さん言葉を是非、覚えておいてください。目標に向かって本気で取り組んだ経験は、たとえ目標が達成されなくても決して無駄にならないということです。勿論、リスクを背負ってチャレンジをするには周りの人々、特に家族の理解と支援が必要です。今日から始まる3者面談は、そんなことを家族の人々や担任の先生とじっくり話し理解してもらう時間にしてください。

 

4月全校集会校長講話

              渋沢栄一とCSR 

 早いもので新年度が始まって3週間が経ちました。気持ちを新たに学校生活をスタートさせていますか。3年生は先日も言いましたが、進路実現に向けて本気の姿を見せてください。2年生は部活動や学校行事など全ての場面において、中心的な役割を果たさなければなりません。是非51年目の所商を引っ張っていってください。そして新入生諸君はどうですか。所商生活に慣れてきましたか。部活は楽しいですか。特に授業では、初めて学ぶ商業科目に少し戸惑っているかもしれません。しかしそれは新入生全員が同じ条件です。新入生全員がゼロからのスタートです。学び始めの今がとても大切です。しっかりと学んでください。

 さて先日、5年後の2024年から発行される新1万円札に、渋沢栄一の肖像が使われるというニュースがありました。埼玉県の深谷市出身で、日本で初めての商業銀行や東京証券取引所などの創立に尽力した「日本資本主義の父」と呼ばれた人ですから、埼玉県の商業高校で学ぶ皆さんはこの機会に是非、渋沢について学び、誇りに思ってほしいと思います。

 渋沢は明治・大正に活躍したわけですが、当初、大隈重信に説得されて大蔵省に入省しますが、その後退官し実業家になります。大倉喜八郎や浅野総一郎といった当時の非財閥系の実業家と手を組んで、例えばサッポロビール、帝国ホテル、東洋紡、みずほ銀行など、今でも各業界をリードする大企業の創立にかかわりました。彼が生涯でかかわった企業の数は500社とも言われています。

  また同時に彼は、社会貢献活動にも熱心に取組み、日本赤十字社、東京慈恵会などの財団法人や大学の設立に力を入れ、生涯で600の福祉や教育関係の社会事業にかかわりました。

 なぜ彼が社会貢献事業に熱心だったか。それは彼が生涯貫いた理念が、「道徳と経済は両立する」ということだったからです。つまり私利私欲ではなく公の利益を追求する「道徳」と、利益を求める「経済」が事業において両立しなければならない、というもので、これを「道徳経済合一説」と言います。代表的な彼の著書「論語の算盤」の中で書かれています。事業をする上で、常に社会貢献や多くの人の幸せにするといった公益を追求しながら、同時に利益を上げていくという理念です。簡単に言えば、「経済は良い社会のためにある」と言うことです。

 なぜこの話を今皆さんにしているかと言うと、実は渋沢栄一のこの思想は、現代の社会で大変注目されているからです。グローバル資本主義、新自由主義といった過度に利益を追求する現在の市場経済の在り方、そしてその結果、格差が広がる今の資本主義社会に対する懸念から、今この渋沢栄一の理念が見直されています。

 皆さんはCSRという言葉を知っていますか。Cooperate Social Responsibility の略で、日本語にすると「企業の社会的責任」ということです。すなわち企業が倫理的な観点から事業を通じて、自主的に社会に貢献する責任のことです。

 最近では、環境問題などの社会的課題に、それぞれの企業が自社の強みを活かして解決に当たる、そしてそれをビジネスに繋げ、会社が発展するチャンスとして捉る。そんな積極的なCSRの取組みをする企業が増えてきました。また国や銀行、そして投資家も、環境問題などに積極的に取り組む企業に投資するという傾向になってきています。

 渋沢栄一から100年以上が過ぎ、これからの経済社会は、渋沢の掲げた理念を実践していかないといけないと人々は気づき始めたのです。それはそうしないと、もしかして地球そのものが持続しないという危機感からかもしれません。

 商業高校に学ぶ皆さんは、是非、渋沢の理念を学び、CSRという言葉を覚えてほしいと思います。そして今後の進路選択において、大切な視点として持っていてほしいと思います。「良い企業・経済は良い社会のため」という言葉を忘れないでほしいと思います。


第51回入学式式辞

 新緑が芽吹く春、すべての生命が躍動するこのよき日に、PTA会長・坂田大作様、後援会会長・浦島健二様をはじめ、多くのご来賓の皆様方、保護者の皆様のご臨席を賜り、ここに埼玉県立所沢商業高等学校第51回入学式を挙行できますことは、本校にとりまして、この上ない喜びと深く感謝申し上げます。 

 ただいま入学を許可いたしました235名の新入生のみなさん、入学おめでとうございます。在校生、教職員一同、みなさんを心から歓迎いたします。平成の時代から令和という新しい時代が始まろうとしているこの歴史的な年に、みなさんは自らの意志でこの所沢商業高校を選び、本日晴れて入学しました。今日という日はおそらくみなさんにとって、一生忘れることのない1日になると思います。この歴史的な年に、自らの意思で、この所商の門をくぐってきたことを忘れず、充実した高校生活を送れるよう努力してください。 

 保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。心からお祝いと、お喜びを申し上げます。

 さて、新入生のみなさん。いよいよ本日から3年間の高校生活が始まります。

今みなさんにとって大切なことは、新しく始まる高校生活に対して抱いている新鮮な気持ちを、いつまでも忘れずに全てのことに全力で取り組むことです。そのスタートとなる入学式にあたり、私から心掛けてほしいことを3つ申し上げます。

 1つ目は、「大きな夢と高い志を持つ」ということです。この変化が激しく予測のつかない時代を、みずからの力で切り拓き夢をつかみ取るためには、みなさんひとり一人が学力は勿論、新しいことにチャレンジする積極性と豊かな人間性を身に付けなければなりません。自分が将来「こうなりたい」という明確な理想像を持ち、それに向けて資格取得や部活動、また学校行事においても精一杯努力してください。そうすれば、さらにその先の進路においても大きな成果を得られることは、本校の多くの先輩方が証明しています。その原動力が「大きな夢と高い志」です。大きな夢と高い志を持って、本校での3年間精一杯努力してほしいと思います。

 2つ目は、「商業の専門科目はもちろん、普通教科にも全力で取り組む」ということです。みなさんは商業を学ぶために本校に入学しました。しかしこれからのグローバルな経済社会で活躍するためには、その基盤となるビジネスに関する知識や技術を習得すると共に、さまざまな分野の学問についても学び教養を深めることが極めて大切です。高校で学ぶ内容は、これまでに比べ広く深くなりますが、まじめに努力すれば必ず自分の立てた目標に到達すると思います。

絶え間なく変化する社会の中で生きていくためには、商業の専門科目も普通教科もしっかりと学び、高い知性と幅広い教養を身に付けてほしいと思います。

 最後は、「多様な価値観を認める」ということです。グローバル社会、グローバル人材という言葉を聞いて「私には関係ない」と思う人もいるかもしれません。しかしそうではありません。この日本の社会における「内なるグローバル化」は確実に進んでいます。現在我が国には、約264万人の外国人が暮らしています。また埼玉県内の外国人も増え続け、平成30年6月末で17万4千人、県の人口に占める割合は2.4%となり約50人に1人は外国人です。さらにこの4月には、国の法律が変わり、多くの外国人が日本に働きにやってきます。また来年、東京で開催されるオリンピック・パラリンピックを契機に、世界中からさらに多くの人々が日本にやってきます。みなさんが社会に出るころには、外国人と働き共に暮らすということはあたりまえになるのです。ですからみなさんには、多様な文化、宗教、価値観に関心を持ちオープンな心で接し理解しようとする態度を養ってほしいと思います。近い未来、世界中から集まる人々と共に平和で豊かな多文化共生社会を築いていくのはまさにみなさんなのです。以上、「大きな夢と高い志を持つ」「商業科目も普通教科もしっかり勉強する」、「多様な価値観を認める」、この3点について心掛けてほしいと思います。

 最後に、保護者の皆様にお願い申し上げます。学校教育においては、学校・家庭・地域の連携が重要です。特にご家庭の協力なしには教育の成果は期待できません。私たち教職員一同、一丸となって指導にあたる所存ですが、各ご家庭におかれましても、本校の教育方針をよくご理解いただき、健康的な生活習慣や家庭学習について、ご指導いただきますようお願いいたします。

 結びに、元号が令和となる記念の年に、創立五十一年目を迎える伝統校に入学した新入生のみなさんを、心から歓迎すると共に、一人ひとりが充実した高校生活を送ることができますように念願し式辞といたします。


                      平成31年4月8日

                      埼玉県立所沢商業高等学校長

                      鈴 木 啓 修


始業式校長講話

みなさん、おはようございます。まずは、こうして無事に新年度を迎えられたことに感謝したいと思います。みなさん、元気に登校してくれてありがとうございます。

 いよいよ、今日から新年度がスタートします。ここにいる新3年生、新2年生の皆さんは、進級おめでとうございます。今日から気持ちを新たに頑張ってほしいと思います。

 今、「気持ちを新たに」と言いましたが、今年は「気持ちを新たに」するには大変、相応しい年だと思います。新しい元号も「令和」と決まり、5月1日から令和元年が始まります。今の天皇陛下の退位、そして新しい天皇の即位と、この歴史的瞬間をみなさんは目の当たりにできるわけです。是非、目にしっかりと焼き付けてほしいと思います。昭和から平成に元号が変わった30年前は、私は教員になって3年目、25歳の正月でした。あの時は、昭和天皇が崩御されての改元でしたから天皇陛下の葬儀、「大喪の礼」と呼ばれた儀式が行われ、決してお祝いムードではありませんでした。様々なイベントが中止になったり、テレビのお笑い番組が自粛されました。大喪の礼当日は学校も休みになり、テレビでその模様をずっと見ていたのを今でも覚えています。今回はおめでたい雰囲気の中で、退位、即位の儀式があると思います。一生に何回も見られることではない歴史的瞬間ですので、しっかりと見てほしいとと思います。

 その他にも、今年は多くの新しいこと、また何十年に一度というイベントが多くある年です。例えば政治で言えば、今年は、統一地方選挙と参議院選挙が重なる12年に1回の亥年の選挙です。18歳になる3年生諸君は是非、興味を持って積極的に投票に行ってください。10月には消費税が10%に、そして9月にはアジア初のラグビー・ワールドカップが日本で開催されます。そして来年には、56年ぶりの東京でのオリンピック・パラリンピックが開かれます。まさしく一生に1度か2度しか経験できないイベントが目白押しです。本当に楽しみでワクワクしますね。気持ちを新たに迎えたいと思います。

 その中でも私が気になるのは、やはり出入国管理法の改正です。今月1日に施行され、特定技能という新たな在留資格が整備されました。この改正により日本で初めて、高度な専門知識を要する仕事以外の比較的単純な仕事に、外国人が従事できるようになります。これにより、この先5年間で34万5千人の外国人が日本にやってくると政府は見込んでいます。

 私は昨年の1学期始業式でも「日本社会の内なるグローバル化」の話をしました。日本社会に住む外国人はどんどん増えています。現在、我が国には約264万人の外国人が暮らしています。264万人とは京都府の人口とほぼ同じです。また埼玉県内の外国人も増え続けています。平成30年6月末で17万4千人、県の人口に占める割合は2.4%となり約50人に1人は外国人です。この傾向は、先ほどお話しした出入国管理法の改正によりどんどん加速していくでしょう。

 みなさんが社会に出るころには、外国人と働き、共に暮らすということはあたりまえになるのです。ですからみなさんには、多様な文化、宗教、価値観に関心を持ってほしいと思います。オープンな心で接し理解しようとする態度を養ってほしいと思います。また、多様性を認める寛容な心は、なにも外国人に対してだけではありません。障害を持つ人、性的マイノリティをはじめ、自分とちょっと価値観、考え方が違う人、そういう全ての人々を寛容な心で理解しようと努力し、共存していくことがこれからの世の中を持続可能ものにしていくために大切なのです。みなさんはもうすでにそのような寛容な心、優しい心を持っていると私は信じています。また、なぜいまこの話を繰り返ししたかというと、それはこの多様性の尊重という話は、大変身近なお話だからです。今日の午後入学式があります。本校にも多様なバックグラウンドを持った新入生が入学してきます。是非、全ての新入生を温かく迎え入れ、共に所商51年目を築いていきましょう。よろしくお願いします。


3学期終業式校長講話

              1年を振り返って

まずは、先日の卒業式でのみなさんの態度が素晴らしくよかったと思います。ご協力ありがとうございました。静粛にすべき時は静粛に、歌を唄うときは大きな声で歌ってくれました。大変メリハリがあって「卒業生の門出を祝う」という気持ちがとてもこもっていました。厳粛な中でも温かさを感じるよい卒業式だったと思います。ありがとうございました。
 さて、この1年間、校長としてみなさんに始業式、終業式、全校集会などの機会にいろいろな話をしてきました。ちょっと振り返ってみたいと思います。1学期の始業式には、「日本社会の内なるグローバル化」という話をしました。この4月から出入国管理法が変わり、多くの外国人が日本へやってくる。私たちはそうした外国人と仲良くやっていく共生社会を創っていかなければならないと話しました。また今年度は、本校の50周年ということで、先人の情熱と努力に思いを馳せることが大切だと「歴史の重み」についてお話しました。

  2学期の始業式では、礼儀正しく、協調性を重んじることがグローバル人材に成長するための第一歩であると話しました。また、弓道で使われる「正射必中」という言葉を紹介し、結果にこだわらず、正しいステップを踏んで努力することの大切さの話もしました。また、SDGsの話をした時には、みなさんが今後、就職する際、企業が社会的責任をどれだけ考えているかを、企業を選ぶときの基準にしてほしいという話もしました。

 今日は今年度の最後の校長講話ですので、私が皆さんに今、一番伝えたいことをお話しします。それは、「環境のせいにしない」ということです。人間は自分にとって不都合なことが起きた時、環境のせいにしがちです。成績が悪いと「先生の教え方が悪い、授業の雰囲気が悪い」と言ったり、部活動で試合に負ければ、「顧問が悪い、チームメートが悪い」と思ったり、家庭で問題が起これば、「こんな家に生まれたくなかった」などと思ってしまう。人間は弱いものですから人のせい、環境のせいにしたくなります。私は、昨年の6月の朝礼で「反面教師」の話をしました。その時に自分の高校時代のお話をしました。私が中学生のころまでは、父親は町工場を経営しており、けっこう裕福でした。しかし、私が高校生になるころ倒産してしまい、一気にどん底の生活になってしまったという話です。自分はこのことを、なんとかくじけずに乗り越えることができたわけですが、実はこの時、私が通っていた高校のある信頼する先生が私にこう言ってくれました。「お父さんを恨んでも、環境のせいにしても何も解決はしないよ。お前がしっかりと努力して自分の人生を切り拓いていくんだ。」と。この言葉のおかげで、私は父親を恨むこともありませんでした。家庭のせいにしてなげやりになったりせずにすみました。私は「人のせいにしても、環境のせいにしても何も変わらない。人生は自分自身が切り拓いていくものだ。」と高校生ながらストンと心に落ち、前向きに頑張ろうと決心することができました。今振り返ると貴重な経験をしたなと思っています。だから私は、教員として生徒に一番伝えたいことの一つとして、よくこの話をします。今日は、今年度最後の校長講話ですのでこの話をしました。もう一度言います。「環境のせいにせず、人生は自分の努力で切り拓いていくもの」です。覚えておいてください。

  4月はもうすぐです。4月になると2年生は最上級生、1年生は学校の中心的存在の2年生になります。そしていよいよ後輩が入学してきます。新年度の準備をしっかりしてください。不都合なことが起きても、環境のせいにせず、今、自分ができること、しなければならないことをコツコツと実行してください。来年度は元号も変わり、いろいろなことが変化していく新しい時代を迎えます。全てが新しくワクワクする1年にしてほしいと思います。そして51年目を迎える所商を、みんなでしっかりと築いていきましょう。

第48回卒業証書授与式校長式辞

 厳しかった寒さも和らぎ、春の息吹きが感じられるこの佳き日に、PTA会長 坂田大作様、後援会会長 浦嶋健二様をはじめ多数のご来賓、保護者の皆様をお迎えし、ここに埼玉県立所沢商業高等学校第48回卒業証書授与式が挙行できますことは、卒業生はもとより、在校生、教職員にとりましても、誠に大きな慶びであります。ご臨席をいただきました皆様方に心から厚く御礼申し上げます。

 卒業証書を授与された226名の卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。入学以来、3年間の努力が実を結び、めでたく卒業するみなさんに心からお祝い申し上げます。

 みなさんは、3年前、大きな夢を持って本校の門をくぐりました。初めて学ぶ専門科目に、最初は不安で戸惑う人も多かったと思いますが、みなさんは未来の社会を担う有為な職業人を目指して、授業はもちろん、補習や家庭学習に精力的に励み、簿記や情報処理をはじめ、多くの資格を取得しました。そして、学校生活の様々な場面において、目標に向かって努力すれば、おのずと良い結果を得ることができるということを体験し、「自信」という大きな財産を得たことと思います。

 日々、悩みながらもやり抜いた部活動。本気になって取り組んだ文化祭や体育祭。また進路で悩んだ時など、いつもそばにいてくれたのは、友や先生でした。みなさんは、この3年間、多くの人に支えられて、ここまで来ることができました。これからもみなさんは、ひとりで生きていくことはできません。多くの人とのかかわりの中で生きていくのです。本校で出会った友や先生を生涯、大切にしてください。きっと卒業後も大きな力になってくれると思います。そして、みなさんの最大の理解者であり、これまでいつくしみ、育んでくれた御家族への感謝の気持ちを決して忘れないでください。

 卒業は、みなさんの長い人生における大きな節目であります。思いを新たに、次のステージに進む旅立ちの日であります。この旅たちの日に、はなむけの言葉として、私から2つのことをお願いしたいと思います。

 1つ目は、「共感する心を持つ」ということです。これからみなさんは、新しい世界に羽ばたいていきます。新しい環境に身を置き、新しい多くの人々と出会うことになります。自分と全く違った考え方、価値観を持った人と出会うことでしょう。また、異なった文化や習慣、言語や宗教を持った人々とも、共に生きることになるかもしれません。そんな時、「この人は自分と違う」といって、理解しようとすることを諦めたり、排除したりしないでください。理解しようと努力する心、共感する心を養ってください。自分と違った価値観を認め、理解しようとする「共感力」はみなさんの人生を豊かにするだけでなく、これからの日本の社会をも豊かにするからです。

 2つ目は、「学ぶ姿勢を生涯持ち続けてほしい」ということです。みなさんは、日々めまぐるしく変化し、予測が困難な時代に生きています。今後、さらに情報化、グローバル化が進み、社会構造そのものが大きく変化していきます。今日の知識が明日には役立たなくなっているかもしれません。常に学ぶ姿勢を持ち続けることが大切です。学ぶ場は、学校だけではありません。就職する人も、これからが新しい学びの始まりだと考えてください。学ぶ意欲を持ち続けることが、有為な社会人となるための第一歩です。社会人としてスタートを切る人、さらに大学や専門学校に進む人、みなさんの進む道はそれぞれですが、それぞれの目標に向かって学び続けてほしいと思います。

 最後になりましたが、保護者、ご家族の皆様方におかれましては、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。この3年間に立派に成長されたお子様の晴れ姿を目にされ、喜びもひとしおのことと存じます。皆様には入学以来、本校の教育方針をご理解いただきまして、終始、温かいご支援とご協力を賜りましたことを心より感謝申し上げます。

 結びに本日ご臨席いただきました皆様方に改めて御礼申しあげますと共に、226名の卒業生のみなさんの輝かしい前途を祝し、今後の限りないご活躍を心から祈念いたしまして式辞といたします。

                                 平成31年3月13日

                                 埼玉県立所沢商業高等学校長

                                 鈴 木 啓 修