所沢商業高校は50周年を迎え、11月に創立50周年記念式典を開催しました。
新しい制服(平成31年度入学生から適用)も披露されました。
創立50周年を迎えて
この度、県教育委員会教育長小松弥生様をはじめ多数の方々からご祝辞や玉稿を賜り、本校創立50周年記念誌を刊行できますことは、誠に意義深く、生徒・教職員一同にとりまして、大きな喜びとするところであります。この歴史的な節目にあたり、本校教育に深いご理解と多大なるご支援を賜りました県教育委員会、所沢市をはじめ、PTA、後援会、同窓会の皆様並びに地域の関係の方々に厚く御礼申し上げます。
本校は、昭和44年4月に全国でも数少ない小学科制による商業高校として1学年6学級、生徒数291名をもって開校いたしました。創立時は、商業科、経理科、そして県下初の国際関連学科としての貿易科の3学科を設置しスタートしましたが、昭和46年、情報教育の急速な普及に伴い、情報処理科を増設しました。また平成6、7年には、本県の商業教育に関する諸課題を踏まえ、国際流通科、ビジネス会計科、情報処理科に学科を再編し、外国語教育やソフトウェア教育に重点を置く新しいタイプの商業高校つくりを目指し、常に時代の先を行く先進的な取組を実践してまいりました。コンピュータの導入をはじめ、複数の外国人講師による英語運用力向上のため授業、LL教室による音声中心の英語学習、インターネットを活用した海外との交流など、今では多くの学校が実践し、当たり前になりつつある取組のいわば先駆者としての役割を果たしてまいりました。また、国際理解教育にも力を入れ、アメリカ合衆国、オーストラリアをはじめ、多くの国々から交換留学生や教育視察団等を積極的に受け入れ、平成10年には、ニュージーランドの高校と姉妹校締結をし、生徒、教職員の相互訪問が行われました。また本校は、昭和45年の「商業高校におけるLL利用の英語指導について」という県教育委員会からの研究指定を皮切りに、教育課程研究、防災教育推進校、交通安全教育推進校など、様々な国や県の研究指定を受け、推進校、研究指定校として研究開発を行い、その研究成果を発表することで、本県の専門高校教育の質の向上に貢献してまいりました。近年では、平成29年に「次代を担う産業人材イノベーション事業」推進校、及び「未来を拓く学びプロジェクト」の研究開発校として、専門分野における知識、技術・技能のスキルアップやアクテイプ・ラーニングを促す指導法の研究に、日々邁進しております。
部活動等においては、野球部の3度にわたる甲子園出場をはじめ、全国商業高校英語スピーチコンテストでの決勝進出など、多くの生徒がそれぞれの活躍の場で努力し、輝かしい成果を収めております。
現在、我が国は大きな転換期にあります。急激な人口減少、超高齢化社会の到来、AIの発達や第5次産業革命の到来など、社会を取り巻く環境は大きく変わり、日本経済を支えてきた仕組みや社会の制度も大きな変化が求められています。教育界に目を向けても、新しい学習指導要領の導入や高大接続改革など高校における「学び」そのものの見直しが迫られる大転換期を迎えています。このような大転換期に創立50周年を迎えた所沢商業高校、この歴史的な節目に改めて半世紀前、創立時における本校の「ミッション」を再認識し、原点に立ち返りたいと考えております。そして、これから激しく急速に変化していく社会が本校に求める「ミッション」、「所商らしさ」、「スクールアイデンティティ」を明確にしていきながら、本校が進むべき方向に向かって教職員、生徒、保護者が一丸となって次の50年に向けて歩んでまいりたいと存じます。
結びに、創立以来、本校の発展にご支援いただきました関係者の皆様に重ねて感謝申し上げるとともに、創立50周年を契機として地域の期待に応える魅力ある商業高校として、日々の教育活動に汗を流していく所存でございます。より一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
創立50周年に寄せて
創立50周年おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
私は、平成22年度から、3年間勤務させていただきました。
所商のプログを拝見しますと、生徒達の活躍の様子が手に取るようにわかり、在任当時を懐かしく思い起こします。
所商に初めて伺った折、野球部をはじめ行き交う運動部の生徒達が、元気よく挨拶してくれ、好印象を持ちました。自身の最後の教員生活を清々しい気持ちでスタートできると思ったものでした
所商の特徴の1つは、地域社会との交流か盛んで、緊密な関係が保たれているということです。
夏の野球大会では、スカイプルーのユニフォームを着てグランドで活躍する野球部員を、吹奏楽部の演奏に合わせて生徒・保護者と一緒に応援させていただきました。そこには、必す多くの卒業生や地元から駆けつけたファンの人達か加わり、どこの球場に行っても所商の応援は賑やかだったのが印象に強く残っています。
狭山ヶ丘商店街との交流では、夏祭りに生徒が神輿の手伝いをしたり、歩行者天国ではダンス部の生徒達が踊りを披露したりしました。さらに、糀谷八幡神社やぶさめ神事に弓道部が参加するなど、地元地域との交流が盛んに行われていました。
三ヶ島中学校・林小学校との交流では、小・中・高連携で安全な通学路の整備等を協議する委員会を立ち上げました。夏休みには小学生を招いてパソコン教室を実施したり、吹奏楽部は小・中の生徒との合同演奏会を開催したり、地元の中学校との密接な関係で結ばれていました。林小のフェンスに「がんばれ所商!甲子園をめざせ」という横断幕を掲げていただき、感激したことをよく覚えています。
所商の思い出には、教師一丸となって実施した生徒指導と進路指導があります。
生徒指導では、基本的な生活習慣の確立のために遅刻指導の徹底により、遅刻者数が激減しました。生徒指導部を中心に毎日校門での立哨指導を実施する一方、始業開始5分前に校歌を流し生徒への時間管理の意識化を推進したり、遅刻常習者には始業前に課題提出を義務づけるなど、様々な取り組みを行いました。
進路指導では、新たに中高連絡会を立ち上げ、積極的な進路指導を行いました。商業高校の特徴をコミック化した冊子を作成したり、学校説明会時に大学教授から商業高校の良さを説明していただいたり、公認会計士試験に合格した卒業生から体験談を話してもらったり、主担当の先生方が次々にアイディアを出し、積極的に活動していただきました。
忘れてはならないことがあります。平成23年3月11日の東日本大震災です。卒業式が無事終了した後での出来事でした。地震直後からテレビCMはなくなり、次々にメッセージが流されました。その中でも、埼玉県の詩人・宮澤章二の「こころはだれにも見えないけれどこころづかいは見える。思いは見えないけれど思いやりはだれにでも見える。」が印象的で私達日本人に思いやりの心を改めて思い起こさせてくれました。生徒にも深く印象に残ったことでしよう。
最後に、保護者・地域社会の皆様に支えられ、教職員の皆様と一緒に仕事ができて、本当に恵まれていたと思います。
所沢商業高校の益々のご発展を心よりご祈念し、結びといたします。
創立50周年を祝して
このたび、所沢商業高校が創立50周年を迎えましたこと、誠におめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。
私は、平成25年4月に第16代校長として着任、2年間勤務させていただき、平成27年3月に定年退職を迎えました。商業高校は、教諭時代も含めて初めてであったので、一緒に着任した、商業が専門の大村教頭先生をはじめすべての教職員の皆様に支えられ、なんとか2年間の職務を全うすることができました。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。
商業教育においては、県の委嘱事業であるアントレプレナーシッププロモート事業におけるスキルアップ講座の実施、全商商業経済検定における全四科目合格の快挙、その他各種検定合格に向けた生徒と教員が一体となった日々の取り組み等が思い出されます。
また、部活動では、なんといっても野球部の夏の県大会における花咲徳栄高校を破ってのベスト8進出が印象に残っています。さらに、弓道部の糀谷八幡神社のやぶさめ神事における模範試射、吹奏楽部の三ヶ島まちづくりセンターのファミリーコンサートにおける演奏、野球部の和ヶ原商店街の夏祭りにおける神輿かつぎなど、地域との連携にも力を入れました。
そんな中で、当時の課題として最大のものは、やはり生徒募集でした。何か策はないかと、大村教頭先生とともに日々頭を悩ませていました。所商も、3年生を対象とした説明会や体験入学は、他校と同様に実施していました。しかし、このサイクルから「一歩抜け出すためにはどうしたらいいかを考えました。そこで、3年生ではなく、1・2年生の保護者を対象とした説明会を企画しました。さらに、所商の説明だけでなく、他の様々な特色を持つ高校の説明を一緒に聞くことにより、所商も含め各高校の良さを知ってもらおうと考えました。そこで、所沢市内の所商以外の公立高校五校に依頼し1・2年生の保護者を対象とした合同説明会を開催することを計画しました。平成26年度は、所沢・所沢中央・芸術総合・所商と所沢北・所沢西・芸術総合・所商の2グループに分け、所商を会場に、希望に応じて参加してもらう形態で開催しました。翌年度は、高校の所沢プロック校長会主催で所沢市内中学校校長会の協力を得て、所沢市内15中学校を対象に実施する形にしました。その後も継続して開催され、現在は、6校すべての説明が聴ける形で、さらに会場も公共施設を借用して開催しています。
平成27年3月に退職した後現在まで4年間、フルタイム再任用の数学の教諭として、芸術総合高校に勤務しています。通勤途中に所商があるため、所商の前を必す通るように通勤経路を設定し、朝晩、所商の生徒の様子に触れられるようにしています。朝7時15分頃車で通過すると、野球部やサッカー部の朝練の様子が見られ、帰宅時間では部活動の練習風景とともに、生徒の下校の様子が見られます。部活動が一切練習していないことから、考査期間が始まったことを知り、自家用車の駐車が多いことからPTA関係の行事が行われていることを想像したりしています。通学風景も自転車の左側通行、女子生徒のスカート丈等しつかり指導ができていることがうかがえます。これも日頃の先生方の指導のたまものであることを実感しています。
最後になりましたが、今後も時代のニーズと県民の期待に応えた商業高校として、新ななステージを切り開いていかれることを祈念して、お祝いの言葉といたします。
夢の学科再編 ~さらなる発展を願って~
埼玉県立所沢商業高等学校が創立50周年を迎えられたことに 心からお祝い申し上げます。
私が赴任したころの商業高校は、近年の大学全入時代に伴う強い普通科進学志向に押され、中学生の志願者は県全体でも定員に満たない危機的な状況にありました。所商では全教職員が力を合わせて、中学生に商業教育の魅力を繰り返し発信、さらに簿記や情報処理の出前授業の実施、そして生徒会各部の積極的な地域行事への参加など、学校全体として持てる力を最大限発揮しました。その結果、所商は地域社会から高い評価を受け、志願者倍率も安定していましたが、「現状維持は後退である」との理念のもと、創立50周年を契機に、所商のさらなる発展を願って新たな策を打って出ることにしました。
そこで、他校に先駆けて将来構想委員会を立ち上げ、時代のニーズに応じた夢のある商業教育を再構築すべく、現在の学科をフルモデルチェンジする学科再編事業に着手しました。教育委員会のトップダウンではなく、学校のボトムアップによる前例のない作業は困難を極めましたが、将来構想委員の先生ひとり一人が多方面から資料を集め、アイディアを出し合い、時間をかけてカリキュラムを試作、さらに大学や専門学校などの先進校に出かけてはレポートを作成し議論を重ねてきました。その過程では各委員の「所商を何とかしたい」という熱い思いが伝わってきて、校長としてとても感激しました。
実に2年間40回以上の会議を経て、ようやくまとまったのが、県立高校全国初のスポーツスペシャリストを育成する「スポ—ツビジネス科」、国際社会に羽ばたく経済スペシャリストを育成する「グローバルビジネス科」、未来の情報化社会をリードするIT工キスパートを育成する「ITビジネス科」の三学科案でした。所商の建学の精神である ITビシネスとグローバルヒジネスをしつかりと残しつつ、東京オリンピックや各種ワールドカップ、そして生涯スポーツの隆盛でますます重要視されているスポーツビジネスを新たに加えた斬新な再編案は、日本の商業教育界に一石を投じるのに十分なものでした。
この案は教育委員会高校教育指導課を中心に、時間をかけて検討されましたが、特に「スポーツビジネス科」は県立高校では全国的に例がないということで文部科学省が難色を示し、また、昨今の埼玉県のきびしい財政状況では、学科再編などの大規模な事業を実施することは現段階では困難であるとの結論が出されました。地元の埼玉西武ライオンズ、埼玉プロンコスというプロ球団や早稲田大学体育系学部などの地域機関と連携しつつ、スポーツ科学とスポーツマネジメントを融合したスペシャリストの養成という新たな理念を持つ学科は残念ながら幻となりました。
しかし、所商を愛した人々の所商のさらなる発展を願った思いは、幻ではなく未来に生きて、いつかきっと花が咲くと私は信じています。半世紀前、情報処理教育や国際理解教育ということばも一般的ではなかった時代に、商業教育のパイオニアとして開校した所商は、これからも時代のニーズに応じた夢の商業教育を目指し、前進しつづけていくのではないでしようか。所商がますます発展されますことをひたすら心に念じながら、あいさつとさせていただきます。